B20形蒸気機関車の復元 †京都の梅小路蒸気機関車館(京都市下京区)は、日本の鉄道100年を記念して1972年に開館、かつて蒸気機関車の基地であった梅小路機関区の扇形機関庫を活用した蒸気機関車の博物館で、大正から昭和にかけての代表的機関車16形式18両を保存している。現在、管理・運営はJR西日本が行なっており、このうちの6両は実際に運転できる状態で保存(動態保存)しているが、今回これまで静態保存だったB20形10号機を、構内運転ができるように動態復元することとなった。 B20形蒸気機関車は、1945年(昭20)から1946年にかけて、戦時の機関車不足を補うことを目的に15両が製造された構内入換用の小型タンク機関車。全長7m、動輪直径0.86m、重量20.3tときわめて小さく、国鉄近代蒸気機関車の中で唯一のB形(動輪数2軸)である。戦時設計のために可能な限り資材を節約しており、いっさいの飾りを廃した産業用機関車然としたスタイルである。また、他の近代機関車はエネルギー効率のよい過熱式であるのに対して、B20形は昔ながらの飽和式で、さらにブレーキ装置も一般的な空気ブレーキに対して、特殊な蒸気ブレーキを採用している。 梅小路蒸気機関車館に保存されている10号機は、産業用機関車を多く手がけた立山重工業の製造で、1946年に落成、姫路第一機関区に配置されたのち、1949年(昭24)に鹿児島機関区に転属した。おもに検査のために無動力となった機関車や、貨車の構内入換に従事していたという。後年、他機が廃車されて鹿児島機関区に残された10号機が唯一の稼働機になると、そのミニスタイルから機関区のマスコットのようにも扱われた。1972年、鉄道100年事業で梅小路入りの決定により、鹿児島を離れた。 梅小路蒸気機関車館には動態で運び込まれたが、ブレーキ装置が特殊だったことや、他にも運転可能な機関車が多かったことから、同館で走った実績は残っておらず検査も受けていない。つまり、今回の動態復元は、鹿児島機関区で稼働していた時代以来30年ぶりの復活となり、蒸気機関車の動態復元工事はJR西日本としては初めてのこととなる。 復元作業は、4月下旬に解体作業を行ない、ボイラーを修繕したうえでボイラー性能検査受検、並行して車体や走り装置の修繕を行ない、8月下旬には仕上げ作業に入るスケジュールが立てられている。また、今回の復元作業においては、ボランティアの手を借りる計画も進められている。具体的には、機関車修繕を経験したOBに現役社員の指導役を務めてもらうほか、一般の希望者にも最終的な仕上げ・磨きなどに参加してもらうというもの。募集要項は、追って梅小路蒸気機関車館のホームページなどに掲示する予定。完成後は、館内の構内運転「スチーム号」の牽引機関車として使用することになる。 なお、梅小路蒸気機関車館の保存車両は、9633(9600形)/8630(8620形)/D50 140/C51 239/C53 45/C55 1/C11 64/C57 1/C58 1/D51 1/D51 200/C56 160/B20 10/C59 164/D52 468/C61 2/C62 1/C62 2の18両で、太字が現在の動態保存機。なお、そのうちC57 1は春から秋にかけて山口線で「SLやまぐち号」牽引の任にあたるため梅小路機関区を離れている。また、C56 160もイベント運転などで各地に出張することが多い。 (2002年6月号) |