カーゴ21 †7月6日、政府閣議で「新総合物流施策大綱」が決定された。これは1999年に策定された「物流施策大綱」の目標年次に到達し、新たな課題も出てきたために策定されたものだが、この中で「環境問題の深刻化、循環型社会の構築等社会的課題への対応」についての施策の方向性として、1997年に決まった「京都議定書」の温室効果ガス排出削減目標の達成にむけて、モーダルシフト化率を向上させ、2010年までに鉄道貨物や内航海運の比率を50%以上の水準とすることが掲げられた。 一方、JR貨物は自らの競争力強化のために高速荷物輸送開発・複合輸送改善・物資別輸送改善の3つのプロジェクトを立ち上げており、今回の新物流大綱により各施策にはずみをつけることとなった。このうち、高速荷物輸送開発プロジェクト、称して「カーゴ21」で具体的に検討されているのが、東京〜大阪間に新型コンテナ列車を走らせ、到達時分の短縮を図ることはできないかという案件である。 現在、陸上貨物輸送はトラックが大半のシェアを占め、残念ながら実質的に鉄道輸送が対抗できるのは東京対北海道・九州など、かなりの遠距離に限られる。それでも5対5の比率には届かないという。最も物流の盛んな東京〜大阪間では、鉄道はほとんど利用されない。その理由は、トラック同士の過当競争によりトラック運賃が非常に低廉であること、高速道路により6時間台で到達でき、ドアツードアの輸送、さらに集荷・配達時刻についても利用者の厳しいニーズに応じていることなどがある。こうした速達性が最も要求されるのが、いわゆる宅配便で、夕方に集荷し、翌日10時には相手先に配達しなければならない。 一方、現状の鉄道輸送の場合、正味の運転時間が最速列車でも6時間40分、これに積み卸しと前後のフィーダー輸送を加算すると、8〜9時間以上はかかる計算となる。 鉄道がこの分野に参入するためには、最低でも東京〜大阪間を5時間台で結ばなければならないとされる。このため考えられるのが、現在の高性能電車に諸元をあわせて、高加減速、高速の曲線通過が可能で、最高速度も130km/hへの引き上げを前提にした電車タイプのコンテナ列車である。 イメージとして、前後2両ずつの動力車の間に12両の付随車を挟む16両編成で、現在の宅配便に利用されている30ftまたは31ftのコンテナを動力車には各1個ずつ、付随車には各2個ずつを積載する姿が考えられている。コンテナ自体の軽量化によりコンテナ1個の積載重量を12tとし、フル積載の場合のコンテナ総重量は322t、編成重量は728t、VVVFインバータ制御、出力3,520kW、ブレーキは発電ブレーキ併用電気指令式、空気ばね台車とする。 当初は5時間30分運転を目標に置いたがそれには大幅な地上設備の改良が必要とわかったため、現在の線路条件で基準運転時分を洗い直した結果、東京貨物ターミナル〜梅田貨物駅間を下り5時間55分、上り6時間08分での運転が、ほぼ可能との見通しを得るまでに漕ぎ着けている。 (2001年10月号)
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