グリーン車 †日本の鉄道も創業期は3等から1等(当初は上中下)まで3つのクラスに分かれており、等級制の下では運賃も別立てとなっていたので、後年になっても、特急1等車を利用すると普通列車3等の場合の6倍以上の格差があった。一般大衆の利用は3等が相場であったが、3等の切符では2等車に乗車できず、差額の問題よりも利用客の階層を分ける結果となり、寝台車などの設備も1等・2等から始まった。 国鉄の3等級制は戦後も残ったが、1960年(昭35)、東海道線の特急「つばめ」が電車化されることになり、客車特急に連結されていた展望車を最後に1等車が消えたことから、元1等を廃し、2・3等を1・2等に読み替える形で2等級制に移行した。しかし、高度成長時代を迎えて戦前の階級制度的区分はなじまなくなり、2等車のレベルアップで1等利用が減ったこと、他の輸送機関との競合などから、1969年(昭44)の運賃法改正で等級制を廃止し、主要国の鉄道では初めてモノクラス制を敷いた。 しかし、現実として元1等車が存在するため、座席車についてはグリーン車(特別車両)とし、1等寝台車はA寝台車として、グリーン車は普通運賃と特別車両料金(グリーン料金)によって利用できることとした。2等車は普通車の呼称となった。 グリーン料金は実態に則し、特急・急行列車用と、普通列車用とに区分された。普通列車のグリーン車は当時、東京地区の東海道・横須賀線、京阪神地区の東海道・山陽線の存在が主で、その座席は特急普通車と同等であるため、普通列車における料金のほうが安価となった。普通列車用は列車の運行区間も限られるため、距離区分も短距離用にあわせて細分されている。 ところで、グリーン車の利用状況は最近に至るまで、一部の例外を除いて高くはなかった。特別車両として静粛性を保つ面では好ましいが、常時、回送車両を連結しているような状態では意味がない。そのため近年は価格を下げる動きが生じている。 まず、JR九州が1996年11月に独自の体系をとることになり、2割から4割程度値下げし、201km以上は一定額とした。普通車用の企画切符(割引切符)でもグリーン車への変更を認めるなど、リーズナブルな感覚を押し出している。一方、JR東日本も2002年12月から1年間限定ではあるが、100円の単位以下を切り捨て1,000円刻みのわかりやすい区分を導入し、20〜25%程度値下げ、さらに301km以上は一定額とした。(いずれも他社直通列車などを除く) このほか、東海道新幹線では「こだま」に的を絞ったグリーン車用回数券、東京圏の普通列車グリーン車用には平日のラッシュ方向を除いて利用できるデータイムグリーン回数券など、割安な企画切符を用意して利用を促すのが、潮流である。 一方、列車が短編成化された近年は半室グリーン車が増えており、一見するとローカル特急のそうしたグリーン車は整理されてもよいように思える。しかし、そのように短絡できない事情もある。一つは、役職にある人の往来、または他所から来賓を迎えるさいに必要との要望が強いこと、もう一つは、JRグループが全社的に売り出している、グリーン車利用を前提とした「フルムーンパス」の存在であるといわれる。 (2003年6月号)
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