北国の冬を告げる「ササラ電車

 年間の1/3を雪とともに暮らす北国、札幌を走る路面電車には、「ササラ電車」と呼ばれる除雪車がある。現在、雪1・雪2・雪3形と、1998年に登場した雪11形の計4両が活躍している。

 「ササラ」とは、鍋などを洗うときに使う竹を細かく割って束ねたもののことで、これを車両の前後の回転部に取り付け、下から掻き上げるように回転させて、進行方向前方の斜め45度方向へ雪を跳ね飛ばす。

 ササラの材料は青竹。秋田など東北地方の、標高700m以上の北側の斜面で育ったものが使われる。雪を掻くためには肉厚で柔らかい竹よりも、細く、しなりに強い竹が適して。この竹を束ねて作ったササラを木製の土台に50本ずつ並べて固定し、その台木8本を回転軸に取り付ける。

 正式には「ブルーム式」と呼ばれるこの除雪機械は、市電の前身、札幌電気軌道の技師長であった助川貞利氏の試行錯誤によって原型が生み出されたもの。1925年(大14)のことである。その後、竹以外の素材も試されたが、ピアノ線やプラスチックは柔らか過ぎ、ワイヤーは硬過ぎて道路のアスファルトを削ってしまう。やはり、竹に勝るものはなかったそうだ。ただ、問題は青竹にかかるコスト。ササラ1本が約800円。ひと冬で1〜2回はササラをすべて取り替えなくてはならず、費用はかなりのものになる。

 ササラを回転させるモーターは雪を掻くために大きなパワーを必要とし、600V用を使っている。車体の中央に設置され、回転力はクラッチ切換えにより進行方向側のブルームに伝達される。新型の雪11形は油圧装置、旧型ではチェーンが用いられる。また、ブルームは高さ調節が可能で、雪の状態やササラの減り具合に合わせて調節される。雪11形は左右への位置調節も可能でカーブや電停の安全地帯のきわまで除雪できるようになった。また、路面の氷を砕くアイスカッター装置も装備された。

 ササラは路面上の雪をとばすのが役目だが、路面に溝を付けてゆくのは車輪の役目である。フランジが営業車より少し長くなっており、前後進を繰り返すことで溝が埋まるのを防ぐ。これにもパワーが要求されるため、走行用モーターも600V仕様。抵抗を介さず架線電源を直接使用する。

 ササラ電車の運行時間は、営業運転前の朝4時に定まっている以外、とくにダイヤは組まれていない。運転士とブルーム操作員が2人1組で、最大8人が待機し、雪が積もり始めたら出動する態勢だ。

 「円山に雲がかかってくると、雪が降り出します」と、ベテラン運転士が語る。営業時間内なら営業車の後ろについて作業を行なう。大雪が続けば夜を徹して作業を続け、まる2日交代で走り続けることも毎年数回はあるという。今年は11月18日が初出動、12月8日以降は毎日出動している。朝4時に出庫して、すすきの方面、続いて西4丁目方面へ向かうが、積雪の具合で2台目、3台目と、応援を呼ぶこともあるようだ。

 路面であることと雪掻きの機構上、新雪でも雪質が湿っていたり、自動車の通行で固められた雪、一度寒さがゆるんで再び凍結した場合が最も厄介で、そうならないよう、こまめな除雪が必要。「風がなく湿った雪が降るときがいちばん危ない」そうだ。

 取材中、にわかに雪が降り始めた。ササラ電車がすぐに臨戦態勢についた。黄色いシグナルを点灯し、轟音とともに雪煙を巻き上げていく姿は、とても勇ましく、頼もしいかぎりだ。札幌に路面電車が走り続けるかぎり、ササラ電車は毎年活躍し続けていくだろう。

 ササラ電車は、札幌市電にはなくてはならない名脇役なのだ。

(2001年2月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:39 JST