ステーションルネッサンス

 JR東日本は2000年11月、同社の中期経営構想を「ニューフロンティア21」と名付けて発表した。その中に、中核をなす取組みとして利便性・快適性向上と高収益化をめざした新しい駅づくりの「ステーションルネッサンス」を掲げている。

 21世紀は連結経営の時代といわれ、グループ全体の経営状況が問われる時代となっていることから、これに対して鉄道事業と生活サービス事業、JR東日本とグループ各社間の壁を取り払い、グループ全体が保有する経営資源を最大に活用し、グループの価値を向上させることを最も重要なカギとしている。とくに1日あたり1,600万人の人々が移動し交流する駅空間は最大の資源であることから、その可能性を100%引き出すため、駅を舞台に新たな時間と空間をデザインすることを「ステーションルネッサンス」として展開をスタートさせたのである。

 具体的には、バリアフリー化、わかりやすい案内表示、大きな駅で構内を巡回しながら旅客案内などを実施しているサービスマネージャーの増員などにより鉄道事業としての駅機能をブラッシュアップする。また、たんなる乗降の場、通過点にとどめないため既存設備の見直しによる事業スペースの確保を継続するとともに、首都圏のターミナル駅を中心に人工地盤の建設などの大規模工事によって事業スペースの創出を図る「コスモスプラン」を展開している。鉄道事業と生活サービス事業の相乗効果によって駅の価値を高めるとともに、IT関連などの新規事業を展開して情報発信基地をめざす。さらに、地元自治体と連携してコミュニティセンター化を図るなどの、地域社会との共生を進めるものである。

 この「ステーションルネッサンス」の取組みの一環として、2001年5月に中央本線八王子駅が第一号として既存設備からのリニューアルオープンを果たしている。駅業務機能と物販・飲食業を融合させたもので、まず、駅の「みどりの窓口」と、旅行事業の「びゅうプラザ」の間の仕切り壁をなくして一体化、さらにそのルーム内に喫茶店「ベックスコーヒー」(ジェイアールかいじ企画開発)と物販店「無印良品comKIOSK」(東日本キヨスク)を同居させている。これにより、旅行パンフレットを手にしたその場で喫茶しながらプランを検討したり、買い物や待合せの合間に旅行商品に目を向けるような行動パターンが期待できる。施工エリアは2階コンコースの約348平方mで、このうち約47平方mが喫茶、約50平方mが物販スペースとなった。

 また、現在、上野駅不忍口付近でも「コスモスプラン」の第一号として、本年春の完成に向けて大規模な再配置が施工されている。同駅は1日20万人の利用がありながら、既存駅舎は1932年に建てられたもので業務施設が現在の新規事業展開など考慮せずに配置されていたほか、施設の陳腐化が目立っていた。そのため、施設配置を大幅に見直して生活サービス施設を面的に整備するもの。あわせて防災設備の設置や耐震補強を行なって安全性を高めるとともに、各ホームへ接続するエスカレータやエレベータを順次、整備している。

 このほか、市中店舗との競争力向上を図るために、駅内のコンビニ事業においては東日本キヨスク(株)とジェイアール東日本コンビニエンス(株)を合併させ、2001年10月から「NEWDAYS」の新たな店舗名に統合した店舗展開を開始、以後5年間で400店に拡大することをめざしている。

(2002年3月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:41 JST