JR東日本に見る 最近のスキー輸送対策

 今まさに冬本番。街にはコートを着込んで足早に過ぎていく人々の間に、スキーの広告が目につく。一昔前ならば大きなバッグにスキー板を抱えた若者を、ゲレンデ直行のスキーバスが発車する夜の新宿や丸の内で見かけたものだが、最近はずいぶん少なくなった。スノーボーダーを含むスキー人口は右肩下がりを示し、全国のスキー場の延べリフト利用者数(索道調査)で表わされるスキー人口は、1992年度の7億5千万人をピークに、1999年度には5億2,300万人まで減少した。スキーがはやらなくなったのだろうか。一説にはスキー人口の中心である若者は、携帯電話など通信費の割合が独占して、レジャーにまでまわらないのではないかという。

 スキー人口の右肩下がりは、スキーバスや、国鉄時代から続いているJRのスキー列車「シュプール号」の本数にも如実に現われている。シュプール号について言えば、今シーズンはついに近畿圏発着便が設定されているだけになってしまった。いつの間にか、東京・名古屋発着のシュプール号はなくなっていた。

最盛期には四大都市圏から15方面へ

 シュプール号は旺盛なスキーバスの需要をヒントに、1985年度から運行を始めた。夜行日帰りの行程で日中をフル活用できる点、専用の割安な切符、特急車両でゆっくり座って移動、渋滞知らずで定時性が高いことなどが人気を呼び、東京・名古屋・大阪・福岡からゲレンデへ向けて出発した。

 JR化後は各社ともテレビコマーシャルを含めてより強くPRし、企画旅行なども積極的に売り出し集客に努めた。JR東日本を例にあげれば、同社は列車に乗ってスキー場へ向かうコマーシャルを毎年制作、2000年度からは大手スキー用品店の「アルペン」とタイアップし、JR東日本はシュプール号を「アルペン号」と改め、またアルペンは列車でゲレンデへ向かうという演出のコマーシャルを放映した。

 しかし、スキー人口が減ると当然ながらシュプール号の利用者も少なくなる。JR東日本がシュプール号を最も多く設定したのは1993年度で1,098本(予定本数)、29万人を輸送した。これが2000年度のアルペン号はわずか122本(同)、2万人であった。そして、今シーズンは前述のように、「シュプール号/アルペン号」と冠がつく東京発着の列車は0になった。なお、アルペンとのタイアップは続いており、今シーズンもスキーウェアを着たタレントが新幹線に乗り込むテレビコマーシャルが流れているし、3月31日まで上越新幹線のE1系・E4系Maxの先頭車ロゴの下に「Alpen Super Express」のシールを貼付している。

新幹線へシフトするJR東日本の施策

 JR東日本のシュプール号利用客が最盛期から7年で7%にまで落ち込んだのは、スキー人口の減少とあわせて、新幹線網の広がりが影響している。東北・上越・信州とJR東日本管内の新幹線沿線にはスキー場が並ぶ。速達性と本数の多さでシュプール号より新幹線を選択するスキー客は増える一方だ。また、JR東日本も営業施策をシュプール号から新幹線へとシフトさせてきた。前述のアルペンとのタイアップコマーシャルもそうだが、新幹線とゲレンデ連絡のバスがセットされた切符「スノーライナー」などの割引切符の設定にも表われている。ちなみに「スノーライナー」の2000年度の売上げは、対前年比106%であった。また、車両も2階建て車Maxが増備されているので、座席数は相対的に増えている。

 さらに「スキー宅配便」の普及が新幹線利用増に拍車をかけている面もあるそうだ。大多数の人は新幹線駅が最寄り駅ではなく在来線から乗り継いで利用している。夜出発のシュプール号ではあまり関係ないが、朝、新幹線に乗るとなると、大きな荷物を抱えてラッシュの車内に乗り込むことになり、周囲の通勤客に迷惑がられる。それどころか、荷物が邪魔をして乗れないかもしれない。往復3,000円足らずでスキー用具を運んでくれる宅配便のおかげで、スキー用品一式をかついで新幹線駅を歩くシーンは少なくなった。

 しかし、鉄道側は「スノーライナー」「スキー宅配便」などの施策で増客をもくろんでいるが、スキー場へ向かう人は自家用車利用が圧倒的に多い。一般に駅からゲレンデまでは距離が長く、乗換えをしなくてはならない鉄道から、自宅からゲレンデまで「ドアtoドア」で移動できるクルマにシフトしてしまうと、たとえ渋滞に巻き込まれても、クルマの便利さにはかなわないようだ。

ファミリー層が新たなターゲット

 昔も今もゲレンデの主役は十代から大学生までの若者なのは前述のとおりで、2000年度の来場者のうち36.8%を占めている。その次に多い利用者層は、30歳代後半で、23.7%という数字を上げている。近年の晩婚傾向を反映して、30代後半は幼児を連れている、いわゆる「ファミリー層」に分類される。こうしたファミリー層の大部分は自家用車を所有しているがJR東日本では幼い子供の面倒をみて、クルマも運転しなければならない彼らに新幹線を利用してもらうため、駅や旅行センターに置くスキー向けの旅行パンフレットに新幹線の多目的室、託児所つきの宿泊施設を紹介している。新幹線の多目的室は新製時からあったのだから、スキーシーズンだけでなくいつでも利用できるとアピールしてゆけば、冬期以外の旅行シーズンにも子供連れが列車を選ぶ動機になると思うが。

 このようにスキーの主力は依然若者層であるが、ファミリー層も増加傾向にあるので、JR東日本の施策としてグループのガーラ湯沢スキー場を親子連れが楽しめるモデルスキー場に位置づけて、これからの方向を探っていくようだ。

(2002年3月号: JR東日本に見る 最近のスキー輸送対策)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:42 JST