チケットレス化が進み始めた指定券予約 †ビジネスや行楽で列車の指定席を利用するときは、基本的に駅に出向いて予約をし指定券を買い求める。そのさい、人によっては乗車のときには駅に行くのだから、指定券もそこで買えばよいと考える。確かに駅の近くに住む人ばかりではないし、乗車直前にでも予約と指定券の購入ができれば都合がよい。 しかし閑散期ならいざ知らず、繁忙期には乗車直前では希望の指定券の入手がむずかしい。一方、航空業界では、早くから大手航空3社がチケットレスサービスを始めており、搭乗直前までに窓口で引き取るシステムが整えられている。そこでJR東日本では、利用客の利便を考え、1995年から電話やインターネットによる指定券予約サービスをスタートさせている。 チケットレスサービスは会員専用 JR東日本が提供している指定券予約サービスは「ビューカード『とれTEL』」(以下、とれTELと略)と呼ばれている。名前のとおり、JR東日本のクレジットカード「ビューカード」会員専用である。予約できる切符は特急・急行の指定券、個室を除く寝台券で、国鉄時代からあるプッシュホンでの座席予約とほぼ同範囲といえる。しかし個室寝台は対象外なので、看板列車「カシオペア」に乗りたいときは、どうしても駅などに出向き予約をすることになる。 「とれTEL」は1995年10月2日にスタートしたが、それに先立つ1993年2月に「チケットクラブ」として立ち上がっている。これはビューカード会員を対象に、会費とは別に年間500円を支払うことで指定券予約サービスが受けられるというものであったが、あまりメンバーは集まらなかった。そこで、カード会員全体のサービスに変え、名前も「ビューカード『とれTEL』」と改称した。当初は電話のみの受付けであったが、2000年4月8日からインターネットにも対応範囲を広げた。利用するにはビューカードに入会することはもちろんだが、JR東日本のインターネット会員の登録もしなければならない。これは、航空会社のチケットレスサービスも同様であるが、後述する代金の支払いに関係している。 インターネットの「とれTEL」ページへのアクセスは、最近の実績では1日あたり5千件強で、そのうち申込にいたったものは数百件である。ちなみに、昨年、いちばんアクセスが多い日が11月30日で約11,000件、いちばん申込が多かった日は12月3日で約1,600件と、年末年始の予約時期にぴったり重なる。一方、電話による申込件数ははっきりとつかめていないが、インターネットと比較して、インターネット:電話=65:35になるという。 ここで注意しなければならないのは、「とれTEL」のシステム自体が直接マルス(座席予約システム)につながっているわけでない。インターネットでも電話でも、申込に関しては中間にオペレーターを介しているのだ。インターネットで申し込んだ場合、送信後2〜3分で電子メールで回答が返ってくる。 予約が完了したら、あとはJR東日本の駅のみどりの窓口か、びゅうプラザに出向いて乗車直前までに指定券を引き取るか、送料が別に必要だが宅配もできる。(宅配は電話のみ) 代金はビューカードによる決済になる。 申込完了で切符は購入されたことに 前述のように、「とれTEL」のいちばんの魅力は「乗車直前に指定券を引き取れる」ことだが、もし乗り遅れた場合、切符は払い戻してもらえるのだろうか。 答はNO、全額負担となる。「ビューカード会員規約」の「指定券予約サービスに関する特約」の項に、こう記されている。 …本サービスは、会員の予約申込について、当社が電話により予約の完了を回答した時、もしくは電子メール等により予約の完了の回答を発信した時をもって、会員が当社から指定券等を購入したことになります。 ― つまり、予約済みの切符は駅で一時的に預かっているにすぎないのだ。ここで前述のクレジットカード決済が生きてくる。現金による対面決済であれば、もし申込者が引取りにこなければ、鉄道会社が得るはずの収入が空振りになるだけでなく、予約区間はずっと空席のままで走ることになり、こうしたことが積もり重なれば経営にも悪影響をおよぼす。クレジットカード決済にすれば、現金収受の手間だけでなく、収入の取りこぼしも防げる。ただし、指定席特急券の場合、乗り遅れたときは乗車日当日に限り、後続列車の普通車自由席を利用できる。 民鉄各社もチケットレスに動く 今年に入って、東武・京成・京急・小田急・近鉄の各社が、インターネットまたは携帯電話からの指定席予約サービスを行なうと発表、そのうち数社はすでに稼働している。とくに京急・小田急では、携帯電話のインターネット接続によって座席指定券(京急は着席整理券)を予約・購入し、その情報を記録した携帯電話を特急券・着席整理券の代わりとする、ほんとうの意味でのチケットレス(切符なし)を始めた。(小田急は7月から) さらに今春、JR東日本は日本航空・JTBと共同で「旅の総合サイト」を開設する。航空会社・旅行代理店と組んだことで、駅や旅行会社に足を運ばなくても、このサイトで旅行の計画から予約までが完結する。 インターネットを介したチケットレスサービスは、これからも広がってゆくだろう。 (2001年6月号) |