携帯電話を使う チケットレス予約サービス

 JR東日本中央線には、2001年12月から「中央ライナー」と「青梅ライナー」の2系統の通勤ライナーが運転されている。現状は、朝は新宿行きの上りのみ、夜は東京発の下りのみというパターンで、停車駅を新宿・立川・八王子・高尾(「青梅ライナー」は立川から拝島・河辺・青梅)にしぼり、乗車には500円のライナー券、または700円のグリーン券が必要だが、183系またはE257系特急形車両に座って行ける。小田急ロマンスカーなども通勤利用が可能で、同種のサービスである。

 JR東日本の一般的な通勤ライナーは先着順の定員制で、ライナー券には列車の指定はあるが、座席の指定はない。乗車駅ごとに乗車車両が割り当てられており、乗車口も指定され、乗車時に係員がライナー券の所持を確認するが、大勢の乗車にさいし停車時間を要してしまう。

 これに対して「中央ライナー」「青梅ライナー」は当初から全車指定席で、乗車口を指定することはせず、すべてのドアから乗車できる。ダイヤが稠密な中央線では、駅での停車時間を確保できにくいためである。また、他の線区でも通勤ライナーの特急格上げが進んでおり、もともと、車両基地への回送車両を活用した「ホームライナー」から始まった通勤ライナーを質的に見直す動きが出てきている。

 そして新たな施策として、「中央・青梅ライナー」について2002年8月からチケットレスサービスが始まった。「えきねっとTravel ライナー券携帯電話予約サービス」と称し、携帯電話でライナー券を予約するとともに、電話機自体をチケット代わりとするサービスである。

携帯電話が切符の代わり

 利用するにはパソコンからJR東日本のサイト「えきねっと」〔 http://www.eki-net.com/ 〕にアクセスしたうえで同社のクレジットカード、ビューカード利用で会員登録をし、携帯電話の情報などを登録する。予約は、乗車当日の朝5時から各列車が乗車駅を発車する10分前まで可能。携帯電話で予約サイトにアクセスし、簡単な操作で申し込むと、「えきねっと」のサーバーから号車と座席番号が送られる。この画面を画面保存機能等により保存して、切符の代わりとする。利用者は、その携帯電話を持って列車に乗り込む。また、予約結果メールも届く。代金は利用月ごとに合算し、ビューカードでの1回払いとなる。

 従来から、「中央ライナー」のライナー券はJRの座席予約システム(MARS)に収容されないため、一般のみどりの窓口では発売されず、駅ホームのライナー券売機でのみ取り扱われていた。しかし、券売機では直近のライナーのみ発売(例えば20時台には東京21時発の「中央ライナー7号」だけ発売)するため、昼間のうちに夜のライナー券を買っておくことはできなかった。今回のサービス導入は、こうした発売チャンネルの少なさを解消し、サービスアップを図る目的もある。

 さて、実際に携帯電話で予約して乗車してみると、車掌が車内を巡回するものの車内改札はなく、ときおり乗客に車掌が声をかける程度だ。これは、座席の発売状況が車掌が持つ携帯端末によりチェックできるからで、予約の入っていない席に座っていると、車掌からライナー券の提示を求められる。指定された席に座っている限りは車内改札にわずらわされることはない。このシステムは、「中央・青梅ライナー」の運転当初からで、乗客の評判はおおむね良好とのことだ。

「中央ライナー」のサービスアップから

 携帯電話で予約し、座席情報画面が指定券の代わりを果たす先行例は、2001年7月15日から小田急電鉄が「ロマンスカー@Club」という名称で始めている。JR東日本と異なり、すべての特急列車が予約でき、予約取消しもできる。(JR東日本は取消し不可)料金は10円10ポイントとしてあらかじめ積み立てておく方式で、この点でもクレジットカードでの一括引き落としとなるJR東日本版とは異なる。

 JR東日本がチケットレス予約を「えきねっと」のサイトに入れたのは、「えきねっと」がJR東日本のネット予約のポータル(玄関)サイトであることから、入口とサポート面を「えきねっと」にまとめたためである。このサービスがビューカードの会員増のきっかけにもなったが、現在のところ、チケットレス予約はJRが期待していた数より少ないという。

 この点については、チケットレス予約は発車10分前には締め切られるため、行程が確定していないと予約しづらいこと、また、ライナー券はホーム上の券売機で買うものという認識が定着してしまい、あるいは券売機の簡単な操作に慣れたせいではないかと、推測されている。

 これを裏付けるように、東京駅ホームで下り「中央ライナー」を観察すると、ライナー列車が入線しているのを見て初めて券売機に立ち寄り、飛び乗る人をけっこう見かける。始発の東京駅なら快速電車でも確実に座れるので、「中央・青梅ライナー」は運転開始以来、満席になるケースはあまりない。利用者もそのあたりを心得て、たまたま列車があれば乗るが、時間を合わせ座席を予約してまでライナーを利用する必要性が少ないのかも知れない。

 しかしJR東日本では、チケットレスサービスが不評とか不要であるという見方はとっていない。座席予約の自由度が高まり、選択の幅が広がるのは評価でき、今後は他のモバイルツールの活用の道も広がってゆくだろう。他の通勤ライナーや特急列車、新幹線にも拡大されてゆくのか興味があるところであるが、JR東日本としては、まずは「中央・青梅ライナー」のチケットレスサービスの質的向上を図ることが先決と考えているようだ。

(2003年1月号: 携帯電話を切符代わりに チケットレス予約サービス)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:43 JST