フリーゲージトレイン

 フリーゲージトレイン(軌間可変電車/GCT : Gauge Change Train)は、地上設備として設置した軌間変換装置を通過することにより、車輪の左右間隔を軌間に合わせて自動的に変換させる機能を備えた列車である。1994年の運輸技術審議会答申で「鉄道ネットワークの利便性向上と所要時間の短縮を図るためには軌間可変台車の開発が重要」と提言されたことから、開発が始まった。その開発事業は国土交通省の全額国庫助成事業の対象で、日本鉄道建設公団が整備新幹線高度化事業の一環として計画を策定・管理し、具体的な技術開発は鉄道総合技術研究所が受託して行なってきた。

 1994年から3年間で重要な開発要素の試作を行ない、1998年11月に試験車両が登場した。この車両を使用し、国内予備走行試験ののち、鉄道車両のテスト走行施設―アメリカのプエブロ実験線に移して、列車密度が高い日本の営業線では不可能な初期段階の高速耐久試験や軌間変換試験を2001年1月まで繰り返した。現在は再び国内に戻して、いよいよ山陽新幹線と日豊本線を使って本格的な試験が行なわれることになり、プログラムは10月末にスタートした。

 軌間変換を実用化した例としてはスペインの「タルゴ」が挙げられる。ただし、タルゴは客車方式で、軌間変換を行なうのはこの客車のみであり、機関車はそれぞれの軌間に応じた通常の構造のものに交換する。

 これに対して日本で開発中のものは電車であり、台車内にモーターを備えることから、構造の複雑さや、そのために求められる精度が格段に異なっている。また、新幹線として走行するのであれば270〜300km/hレベルの性能が必要で、騒音・振動対策を十分とするには、構造が複雑で重くなりがちな台車の軽量化が重要な課題となる。一方、直通する在来線の条件を考えると、振子機能の付加も考える必要がある。そして多くの機能を備えたうえで経済的にも成立しなければならない。それが、日本において一から研究・開発をしなければならない理由である。

新幹線直通運転化

 車両の開発・試験と並行して、1999年からは導入した場合の整備効果等を検証するため、「新幹線直通運転化事業調査」が行なわれた。まず、山形・秋田新幹線での直通効果が分析され、その結果、通常の高速化で予測される需要増以上の増加が認められたほか、交流を活発化させてイメージの向上や活性化にも寄与するなど、大きな効果があるとされた。また、乗換えの解消自体が30分程度の時間短縮に相当する心理効果があるとされた。

 一方、需要予測モデルを開発し、いくつかの路線で新在直通列車を導入した場合の将来需要を推計した。直通列車を導入しなければ将来的に需要減が見込まれるが、導入した場合、(1)線形や分岐器を改良し、必要に応じて短絡線なども建設して表定速度を現状の79km/hから運輸政策審議会目標の90km/hに引き上げた場合で11%、(2)短絡線を建設せず線形・分岐器の改良にとどめた場合でも表定速度は86km/hとなり、8%の需要が増えるとされた。

 この結果、今後の幹線鉄道整備に有効な一方策となり得るとの有望な評価がなされたが、同時に直通する線区によっては振子機能の付加、新幹線と在来線を結ぶアプローチ部に相当な投資が必要なこと、既存の新幹線の輸送におよぼす影響がフリーゲージトレインの成立条件に大きく関係することなどが課題として挙げられている。

(2002年1月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:45 JST