フルムーン夫婦グリーンパス

 フルムーン夫婦グリーンパスは、国鉄時代から20年以上も続くJR各社共通のフリーパス型切符の定番商品である。

 2人の年齢があわせて88歳以上というのが条件で、2人同時に同一行程で、有効期間内にJR全線のグリーン車(現在のところ新幹線「のぞみ」は除外されている)が乗り放題となる。普通車利用でもよいが、JRバスは除く。B寝台、B個室デュエットは利用できるが、グリーン車個室やA寝台車、他のB個室などは別料金で利用できる。現在は、5日間用、7日間用、12日間用と3種類が用意されている。

 例年、9月から翌年5月まで発売し、10月から翌年6月までが利用可能期間となっている。年末年始や春休み期間、ゴールデンウイークには利用できない。どちらか1人が70歳以上の場合、5,000円割引となる「フルムーン夫婦グリーンパス・シルバー」が用意されている。

 「フルムーンパス」と通称されるこの商品の発売開始は1981年である。国鉄が前年に始めた「振りむけば君がいてフルムーン旅行」のキャンペーンを受けたもので、ハネムーンに対する「フルムーン」の単語は和製の造語だが、これを機に流行した。この画期的商品の発売には伏線がある。

 当時、ヨーロッパなどでは外国人旅行者に対して「ユーレイルパス」を代表に各種のフリー切符を用意していた。それに対して外国人が日本に来た場合に同等のフリーパスはなく、かねて設定の要望は強かった。しかし、海外レベルにあわせると相当な割引率となり、当時の国鉄は、なかなか踏み出せなかったという。ようやく実現したのが「ジャパンレールパス」で、1981年5月に発売を開始した。

 これに対して日本人用も必要ではないかとして作られたのが、「フルムーンパス」である。当時は相次いだ値上げなどの影響で国鉄の利用客が減少していたから、対策として従来にない爐値打ち商品瓩考えられたのである。続いて、現「青春18きっぷ」が1982年、30歳以上の女性2人または3人で利用できる「ナイスミディパス」が1983年から発売された。「ナイスミディ」の設定期間は、「フルムーンパス」とほぼ表裏の関係になった。

 最初の「フルムーンパス」は、7日間用のみで、7万円。1日1人あたり5,000円と計算され、東海道新幹線東京〜熱海間片道でグリーン車を使えば、その額を越える価格帯である。現在の7日間用は99,900円で、同様に比較すると東京〜三島間と同レベルになり、わずかに割引率が下がっている。

 1983年に10日間用が生まれたが、翌84年はそれを改めて12日間用となる。7日間用はこの2年に連続で値上げされたが、その一方でリーズナブルな方向性も打ち出すために1985年に5日間用が生まれ、そのラインナップでJRに引き継がれた。

 現在、JR東日本を例にとると、2001年度は約18,000枚の発売実績となったが、やはり長引く不況や、航空を使った価格弾力性に富む商品の拡充などで、近年は利用が減少する傾向にある。利用可能範囲が日本全国では漠然としすぎること、新幹線グリーン車を利用した場合に最も割安効果が発揮されるため在来線中心の三島会社では割安感が薄まること、さらにその三島会社は他の日常的な企画切符の割引率も高いことなどを理由に、自社エリア内に限った類似商品、あるいはシニア対象の別タイプの商品を設定するケースも生じている。JR全社共通商品としてスケールの恩恵は大きいが、そのぶん地域や時代の状況を反映しにくいという面もうかがえる。

(2003年7月号)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:45 JST