ホリデー・パス

 JR東日本の東京圏で非常に人気のある企画切符、いわゆる「トクトクきっぷ」の一つに「ホリデー・パス」がある。東海道本線は平塚、総武・房総方面は成田空港・茂原・木更津、常磐線は土浦、東北本線は小山、高崎線は熊谷、中央本線は大月と、東京中心60〜80kmエリア内を対象とした土休日専用のフリー切符で、有効期間は1日。姉妹商品に、エリアを120〜170km圏にまで広げた「スーパーホリデー・パス」(有効期間1日)と2日有効の「ツーデーパス」があった。ただし、「スーパー」と「ツーデー」は、先の12月1日ダイヤ改正を機に廃止された。

 「ホリデー・パス」は1991年4月に発売を開始し、すでに10年を越えている。当初の発売額は2,000円で、現在は消費税アップにより2,040円となった。東京とエリア内の最遠方を単純往復すれば元が取れる計算で、何度か乗り降りすれば、いっそう有利になるとあって、初年度の発売枚数は約40万枚だったが、1994年度に100万枚となり2000年度は250万枚となった。

小さな旅

 この切符は首都圏で1988年から開始されたキャンペーン、「小さな旅」の基幹商品としてプロデュースされた。当時の旅行は準備を整えて遠くへ出向くことが主流だったが、もっと気軽に日帰りで身近な場所に出かけてもらおうという企画である。翌1989年から観光や飲食、イベント情報をのせた小冊子を四季ごとに発行し、行楽向け臨時列車「ホリデー快速」の運転も開始した。バブル崩壊以後、レジャー志向も安・近・短となったことで利用に拍車がかかり、最近は町歩きが認識され、健康志向、ウォーキングブームもあってますます好調である。

 一方、利用の流れとしては、東京から郊外へ出かけるものと、郊外から東京・横浜などをめざす流れに大別され、実数では郊外から東京に向かうものが多いという。

 しかし、このように浸透度が高まるほど当初目的の「小さな旅」用としての位置付けはあいまいになる。また、比較的近距離でも新幹線や特急利用が増える傾向にあり、とくに郊外から東京に向かう流れにおいて各地で用意された特急利用の企画切符、例えば「東京自由乗車券」(通称ジユキ)―との競合が目立ってきた。買う側も売る側もどの組合せが有利か判断しづらくなってきたのである。平日に日帰り旅行を楽しむ女性(おもに主婦層)むけ商品として「日帰りめぐり姫パス」も1999年に誕生した。

 そのため今回、競合が多い「スーパーホリデー・パス」と「ツーデーパス」を見直して、スリム化を図ることになったのだ。ちなみに「スーパー」の2000年度発売枚数は41万枚、「ツーデー」は3万枚で、「ホリデー・パス」に対する利用頻度はまったく異なっていた。同時に「東京湾フリーきっぷ」も廃止になった。久里浜港と金谷港をフェリーで結び山手線エリアから一周できる商品であったが、フェリーを舞台にして人気をさらったテレビドラマも過去のものとなり、アクアラインも開通して、この商品の利用度は減った。

 JR東日本営業部の販売部門では、企画切符は世の中の動向にあわせて随時見直し、入れ替えてゆく気運にあるという。

(2002年2月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:47 JST