ボトルネック踏切

 列車の通過本数が多いため踏切の遮断機が長時間下りたままになりがちな、いわゆる「開かずの踏切」が社会問題となっている。国土交通省は、交通遮断量の著しく高い踏切を「ボトルネック踏切」と称し、ピーク1時間の遮断時間が40分以上、または1日の交通遮断量が5万台時以上であることを、その定義としている。

 1961年当時、全国には7万を越える踏切が存在し、さらに、年間500ヵ所のペースで増加していた。しかし、自動式遮断機の整備率は約6%と低く、事故が多発していたため、「踏切道改良促進法」が制定され、立体交差化や構造の改良、保安設備の整備が必要と認められた踏切について運輸大臣(現国土交通大臣)が改良方法を定めて指定し、その保安設備の整備に対しては国および地方公共団体が補助を行なってきた。同法は制定から7次にわたって指定期間が延長され、1999年時点で踏切は半減、事故件数も減少を続けている。

 しかし、それでも踏切事故は年間450件以上発生しており、そのうえ減少傾向は次第に鈍化していたため、より強力に改良を進める必要が生じてきた。このため2001年、踏切道改良促進法を改正し、4月1日施行となった。

 改正内容は、指定期間を2001年度以降5年間延長するとともに、都道府県知事による申出制度を創設、鉄道事業者と道路管理者間などで協議が整わなかった場合には国土交通大臣による裁定制度を創設したことである。知事の申出制度は、踏切の周辺状況については地元知事のほうが熟知しており、改良の緊急性やその効果を判断する重要な情報を効率的に入手でき、法の主旨に照らして迅速に対応できるとして設けたものである。

 この法改正にさいして、国土交通省は現状調査結果を同年12月にまとめた。

 冒頭の定義によるボトルネック踏切は全国に1,082ヵ所ある。このうちピーク1時間に40分以上閉まっている踏切は約500ヵ所で、さらに55分以上遮断の踏切が46ヵ所、ピーク1時間に連続で5分を超えて閉まったままの踏切は約310ヵ所、ピーク1時間の開放回数が10回未満の踏切は79ヵ所、さらに4回以下の踏切が23ヵ所、渡る長さについては半数は通常の複線以下だが、20mを超える踏切も約130ヵ所、歩行者交通量は過半数が1日1,000人未満であったが、5,000人以上の踏切も約100ヵ所あることが確認された。

 こうしたボトルネック踏切は14都府県に存在し、とくに東京都には266ヵ所が集中する。次いで大阪府102ヵ所、神奈川県74ヵ所、兵庫県29ヵ所、埼玉県13ヵ所、愛知県6ヵ所、千葉県3ヵ所、群馬・岐阜・滋賀・京都・奈良・広島・福岡の各府県に1ヵ所ずつとなった。

 ボトルネック踏切は2010年までの10年間で半減をめざすが、約70ヵ所で歩行者向けの緊急対策が実施されることになり、2003年度内に27ヵ所を完了、今後約40ヵ所を進める。完了した27ヵ所のうちの18ヵ所は、立体交差化事業区間での工事中の安全対策として実施したもので、JR東日本中央本線の三鷹〜国分寺間に集中している。緊急対策は、立体横断施設の設置、歩道拡幅、踏切警報時間制御方式の改善、迂回路の確保が挙げられる。

(2004年7月号)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:47 JST