ワンコイン運賃 †都市の公共交通機関をより気軽に利用してもらうため、通常の運賃よりも格安な運賃を設定したり、マイカー利用を減らすために定期券所持者に同伴する場合の運賃を割り引いたりする動きが活発化している。市街中心部に限定して100円硬貨1枚で利用できる「100円バス」を最初に導入したのは西日本鉄道の福岡地区で、1999年7月にスタートした。最初は博多駅〜天神間の循環バスに限定されていたが、以後は同エリアのすべての路線に適用を拡充するなどで一定の効果をあげている。こうした動きは同じ都市中心部の公共交通機関である路面電車にも現われ、数社で同様あるいは類似の動きが出始めている。 土佐電気鉄道では、1999年9月から桟橋線の均一運賃180円を10〜16時の日中に限り100円としている。おもに買物客などを誘致して、閑散ぶりが目立った日中の利用を改善しようとしたのである。次いで、路面電車を核にした町の再活性化に取り組んでいる岡山でも、岡山電気軌道も140円均一だった運賃を同年12月から、岡山駅前から1km前後の区間を100円とした。広島電鉄は市内線均一150円を本年4月から広島駅前〜原爆ドーム前・本通間について120円に引き下げた。支払いの抵抗感をなくして短距離利用の促進を図るねらいだが、路線が競合するバス会社が実施すれば、対抗上、追随せざるをえないという事情がからむ場面も見られる。また、通常200円の運賃を100円に引き下げれば、単純に倍の利用がなければ従前の収益を維持できないので、実施にはむずかしさもともなう。熊本市交通局は本年1〜3月の日祝日に市電キャンペーンの一環として100円均一を実施したが2割の減収となり、もとより赤字経営のため、現時点では恒常的な継続には至らなかった。なお、長崎電気軌道は通常運賃を100円均一で維持しており、これが大きなアピールポイントにもなっている。 一方、マイカー利用に流れがちな土休日に公共交通利用を促進するため、通勤定期券所持者に同伴される利用者の運賃を通常運賃より割り引く制度について、マイカー利用を削減する意味から「環境定期券」などと名づけているところが多い。 土佐電気鉄道は1999年9月からの導入で土日祝日において同伴者の運賃は10円均一と、かなり大胆な制度となっている。東京都交通局(都電)は通常160円が100円に、富山地方鉄道市内線は同じく200円が100円になる。伊予鉄道も本年4月から同伴者100円とした。なお、同社では郊外電車線にも同制度を導入しており、通勤定期券所持者本人が定期券面区間外を乗車する場合も100円としている。 また、都市中心部での利用促進策として土佐電気鉄道では、高知市内中心部の中央商店街「よさこいタウン」で3,000円以上の買物をすると、180円のお買物乗車券がプレゼントされる。均一運賃区間の片道運賃ぶんを商店街が負担することにより、電車での来店を増やし、マイカー利用を前提とする郊外店の攻勢によって空洞化が進みつつある既存商店街の活性化対策にも結びつけているのである。 (2001年7月号) |