駅ボランティア †最近の駅は機械化が著しく、代表例として切符類の購入も券売機の多くの画面表示の中から利用者本人が一つ一つ選択しながら買う場面も増えている。また、構内の店舗やエスカレータ・エレベータ、多機能トイレの設置など設備も充実すると、利便の向上やバリアフリー化進展の反面、構内の複雑化がともなう。しかし、人手の少ない駅となったため、何か尋ねようとして途方に暮れることにもなりやすい。このため、新たな敷居が生まれていると言ってよいだろう。 こうした状況からバリアフリー化のソフト策として発想されたのが、「駅ボランティア」である。切符の買い方にまごついている人、場所を探しているような人を見かけたら、駅員に代わってサポートする役割を担う。時間的拘束があるわけではなく日常の自身の都合でかまわないが、こうした活動と積極的に係わる意志のある一般利用者が駅に登録して、折に触れて活動する仕組である。 全国で最初に導入したのは、2001年5月の横浜市営地下鉄であった。京浜急行と接続するターミナルの上大岡駅でスタートさせ、翌2002年に新横浜、2003年にあざみ野、2004年に戸塚と拡大した。一方、関西では神戸電鉄が最初に手がけ、2002年10月に公共施設が集中する鈴蘭台・西鈴蘭台・北鈴蘭台の3駅で実施している。 鉄道側が参加希望者を募集し、車椅子使用者、視覚障害者、高齢者などのサポートの基本についての講習や疑似体験会を実施して、参加者は名前を登録する。するとボランティア証が交付され、これを付けて活動中は改札内への立入りなども認められる。横浜市交通局が上大岡駅を最初としたのは、この改札内立入りが京急側でも了解されたことが理由の一つとして挙げられる。 これら取組みは、社会的奉仕活動をしたいが場所ときっかけが見つからないという人たちにも注目され、募集に対して、かなり良好な反響が見られるという。神戸電鉄が当時、発表した例によると、最初の募集段階では3駅合計90人としたところ、結果として登録者数は145人となった。また、横浜市交通局も現在、4駅合計で650人に達する。この取組みに対して国土交通省は、2003年度、鉄道の日を記念する「日本鉄道賞」の選考委員会特別賞を横浜市交通局に授与している。 さらに国土交通省では、バリアフリー化をより広く進めてゆくため、「公共交通活性化総合プログラム」を活用して募集ポスターの製作資金などを支援することとし、広い展開を始めた。これを機に西武鉄道の航空公園駅と新所沢駅、東京メトロの護国寺駅で本年8月に活動が始まり、東京メトロ王子駅、横浜高速鉄道の2駅でも実施が計画される。この西武と東京メトロのケースでは、両社の駅構内だけの活動ではなく、地域事情を加味して他社や地元自治体なども参加し、JR駅や周辺施設への案内・誘導なども含めた一体的取組みとしたことが変化となっている。 また、横浜市営地下鉄では昨年、多くの人が参加できる8月中にあざみ野駅で「常駐型」駅ボランティアを試みたところ好評であったため、本年も8月に4駅すべてで実施した。メンバー登録している人がシフトを組み、日中、駅に常駐するものである。 このように、駅でのバリアフリー化については、進んだハードに対してソフトが重視されるようになり、一般の人々の協力も得て実現する方向が模索されている。一方、JR東日本や東京メトロでは主要駅にサービス専門のスタッフを置く手法も採っている。 (2004年10月号)
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