貨物ターミナル

 「貨物ターミナル」と名のつく貨物駅は、2003年11月1日現在、札幌・盛岡・郡山・宇都宮・熊谷・梶ヶ谷・新座・越谷・東京・新潟・金沢・名古屋・岐阜・大阪・高松・広島・北九州・福岡の計18駅を数え、12月1日から神戸港駅を移転した神戸貨物ターミナル駅が加わる。このうち、国鉄時代からの貨物ターミナルは札幌ほか13ヵ所で、JRになってから新潟・金沢・高松・広島・北九州が加わっている。

 国鉄の貨物輸送は、1960年代まで貨車1両を駅から駅へ輸送することを基本に、各駅から貨車を集め、ヤードで組成し直しながら列車を中継して輸送するという体制であった。このシステムは1次産品の輸送が太宗を占めた時代には利点もあったが、貨物が集中する時期にはヤードに貨車が滞留して輸送が硬直化したり、結果として到着日時が不明確になるという問題を抱えていた。1960年代以後、工業製品など2次産品の輸送が増加して物流の近代化が図られ、機動性が高くコスト面でも有利なトラック輸送が台頭し、鉄道貨物は1970年代をピークに大きく落ち込んでしまう。

 そうした状況で国鉄は、旧態依然とした輸送システムを見直す気運の高まりを受けて、鉄道貨物輸送に対する投資を積極化した。ことに1965年(昭40)以後は、都市の拠点間をなるべく速達輸送する直行輸送の考えが取り入れられ、近代的な貨物操車場や高速コンテナ輸送、物資別適合輸送の体系が形作られていった。  このような流れのもとで、1971年(昭46)12月に初めて貨物ターミナルを名のって開設されたのが、宇都宮貨物ターミナルである。地区周辺一帯の駅での貨物取扱いを集約するとともに輸送の中継機能を担うという新たな目的にあわせてイメージに合致した新しい名称が付けられた。

 従来から、貨物扱いに特化した駅の駅名は、「○○貨物」駅、「○○操車場」駅も散見されるが、こうした区分には特段の明確な基準はない。しかし、JR貨物では、いちおうの目安のもとに貨物ターミナルの名称を与えている。

 例えば、国鉄の長期債務返済にあたり、大規模な操車場をはじめとして、貨物取扱い駅の多くで不要な土地を国鉄清算事業団に移して売却すると同時に、貨物輸送に必要な部分をコンパクトに集約する「基盤整備事業」が行なわれている。このようにして機能の高度化が行なわれた駅で、イメージ向上のために駅名改称が考えられる。

 このさい、貨物ターミナルを名のる要件として、
(1) 始発・終着列車があること、
(2) 発着トン数が多いこと、
(3) エリアを代表する駅であること― などが考慮される。

 しかし、貨物の発着トン数は地域により幅があり、厳密な基準となる数値はない。最近の傾向は、地域の代表性に重きが置かれている。一方、始発・終着列車がなく(または少なく)、付近に別の貨物駅があるなどで、必ずしも機能が集約されていないような場合、「○○貨物」となる。また、梅小路駅のように、施設を刷新しても以前からの駅名に根強い愛着が寄せられ、これを踏襲し続けるケースもある。

 なお、貨物駅が生まれ変わる要素としては、基盤整備事業のほか、高松貨物ターミナルのように都市計画による移転、金沢貨物ターミナルのように新幹線建設による移転、北九州貨物ターミナルのように大規模な輸送改善が目的の改良などがある。北九州の場合は、門司貨物拠点整備事業として国の補助金を受けるほか北九州市、JR貨物が出資して施設を整備・保有する第三セクターを設立し、事業化した。完成した施設を貸し付ける形をとっている。

 こうして新設・改良される駅は、現在の貨物輸送に最適な形でマッチさせて、広いコンテナホームや周辺の整備のほか、機関車付替えや構内入換が不要のE&S(着発線荷役:コンテナ貨車を専用のホームに取り込むことなく着発線上で荷役を行なう)方式が織り込まれる。しかし、これらは貨物ターミナルに必須の要件というほどのことはなく、それぞれ例外はある。

(2004年1月号)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:53 JST