関西学研都市と京阪奈新線

 大阪平野の東側、大阪府・京都府・奈良県が府県境としている丘陵地帯を「京阪奈丘陵」と称している。この丘陵地帯では、1987年から関西文化学術研究都市建設促進法に基づく国家プロジェクトとして、「関西文化学術研究都市」の建設が進められてきた。産官学による数多くの公共・民間の研究・文化施設が建設される一方、住宅開発も進んでいる。

 3府県6市2町にまたがる約15,000haをエリアとし、ここを文化学術研究・交流施設、公共・公益的施設などを整備する「文化学術研究地区」12地区約3,600haと、これ以外で研究地区に開連して必要な施設を整備したり環境を保全したりする「周辺地区」約11,400haに分け、整備を進めている。既成市街地との調和を図るとともに農地や森林などの環境保全に配慮するため、一点集中型ではなく、文化学術研究地区を12ヵ所に分散配置して、これらを交通・情報ネットワークで有機的に結びつける多核心連携型開発をめざしたことが大きな特徴という。

 学研都市全体の計画人口は約41万人で、現在までに半分強が定着した。うち、文化学術研地区は計画人口の21万人に対し、7万人弱となっている。とくに中核機能を持つのが、京都府精華町・木津町にまたがる精華・西木津地区で、国際電気通信基礎技術研究所、地球環境産業技術研究機構などの研究施設、国立国会図書館関西館、中心となる交流施設としての「けいはんなプラザ」が置かれている。

 この関西文化学術研究都市へのおもなアクセス鉄道は、JR西日本の学研都市線(片町線)と近鉄奈良線・京都線である。しかし、各線とも学研都市の各地区とは距離があるため、道路交通への乗換えが必要である。そのため学研都市内に直接乗り入れる鉄道が計画された。近鉄奈良線の生駒と登美ヶ丘(仮称)を結ぶ8.6kmの京阪奈新線である。エリアは奈良県生駒市と奈良市にまたがり、行政側が県とこの2市、民間は近畿日本鉄道など40社が出資する第三セクターの「奈良生駒高速鉄道」が1998年に設立されて2000年から建設に入り、開業後は近鉄が運営する。

 路線は近鉄東大阪線を延伸する形で延び、このため直流750V、第三軌条式である。奈良線東生駒付近から丘陵の尾根下をトンネルで北上、住宅地区に至って東に向きを変えながら、途中2駅を経て登美ヶ丘に向かう。駅周辺は大規模に開発された住宅地で、奈良県でも人気のあるニュータウンという。登美ヶ丘は京都との府県境で、そのまま東進すれば近鉄京都線高の原、北東に進めば学研都市精華・西木津地区を経て祝園に抜ける。この両方向については、2004年10月に出された近畿地方交通審議会第8号答申で、「中長期的に望まれるネットワークを構成する新たな路線」に織り込まれている。

 生駒〜登美ヶ丘間の建設は、やや遅れが懸念された時期もあったが、現在は当初計画どおり2005年度中に開業の見通しとなった。2004年8月、全長3.6kmで路線中最長の東生駒トンネルを最後に3ヵ所のトンネルがすべて貫通し、工事全体の進捗率は約8割に達する。軌道工事も2割程度進んでおり、駅などの施設も次第に姿を現わしてきている。

(2005年2月号)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:53 JST