交通バリアフリー法

 現在の日本では外国に例がないほどの急速な高齢化が進行しており、2015年には国民の1/4が65歳以上の高齢者となることが確実となっている。また、全国には300万人の障害者がおり、いずれも積極的に社会参加しながら生活できる環境を整える必要がある。この理念を「ノーマライゼーション」といい、広く浸透し始めている。

 この考えを達成するためには、移動が楽に自由にできなければならず、いわゆるバリアを解消することからバリアフリーと呼ばれ、この言葉もすでに浸透している。道路交通を含めた交通機関がなすべきことも多く、とくに公共交通機関は利便性と安全性の向上が不可欠になっている。

 このような状況から、昨年、当時の運輸省、建設省、自治省および警察庁の4省庁が共同で「交通バリアフリー法」を国会に提出して可決成立、5月17日に公布された。

 交通バリアフリー法は、正式には「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」といい、公布にともない政令や省令が制定されて11月15日から施行されている。

 交通バリアフリー法によって交通事業者は、一定基準に該当する鉄道駅など旅客施設を新しく建設したり大規模な改良を行なうとき、エレベータやエスカレータを設置すること、誘導警告ブロックを設置すること、トイレを設置する場合に身体障害者にも対応した設備を設けること、新車両を導入するときは、鉄道車両では車椅子スペースを確保することと、視覚案内情報装置を設置すること、バスなどでは低床車両の導入、航空機では可動式ひじかけの装着などが義務付けられた。既存の施設や車両についても、なるべくバリアフリー基準に適合させるため、必要な措置をとることを努力義務としている。

 鉄道駅におけるエレベータの整備指針

 なお、鉄道駅におけるエスカレータやエレベータの整備については、1991年に運輸省により「鉄道駅におけるエスカレータの整備指針」が出され、さらにエスカレータよりエレベータのほうが車椅子などでの利用には適していることから、1993年に「鉄道駅におけるエレベータの整備指針」が出され、エスカレータについてもこの指針の中に包括された。鉄道にバリアフリーを具現化したものが本格的に浸透してきたのは、これらの指針以後といえる。

 一方、交通バリアフリー法では、重点整備地区におけるバリアフリーの重点的・一体的な推進も掲げている。これは、バリアフリー化を進めるにあたり、各事業者がばらばらに行なっては非効率で整合性もとりにくいことから、交通事業者・道路管理者・都道府県公安委員会などが連携して施策を一体的に進めることを求めるもの。

 市町村は、駅や周辺などを重点的に整備すべき地区に指定し、移動円滑化のための基本的事項を基本構想として策定することができ、これが策定されたときは関係する交通事業者・道路管理者・都道府県公安委員会は基本構想に即した計画を作成し、連携しながら一体的な整備を進めなければならないと義務付けている。また、国や地方公共団体にも、駅前広場や道路の整備、公園など公共施設の整備について措置を講ずる努力義務を課している。

(2001年11月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:54 JST