高速鉄道国際会議2004 †東海道新幹線開業40周年を記念し、JR東海とJR西日本は、11月9日に東京都千代田区の帝国ホテル東京で、「高速鉄道国際会議2004」を開催した。(後援=外務省、国土交通省、読売新聞社) この高速鉄道国際会議は、世界で初めて200km/hで営業運転を始め、高速鉄道の技術と実績の牽引役を務めているのが日本の新幹線という自負のもと、各国の高速鉄道関係者の参加も仰いで、JR両社の共催で続けてきた。 第1回目は東海道新幹線30周年を記念して1994年9月30日から2日間、京都・都ホテルで行なわれた。そのときのテーマは「高速鉄道の過去・現在・未来」。その後、第2回目が山陽新幹線岡山開業25周年記念で1997年3月12・13日、テーマを「鉄道と社会・人との共生」としてホテルグランヴィア岡山で、第3回目が東海道・山陽新幹線全線開業25周年記念で2000年11月29・30日、テーマを「21世紀の高速鉄道が拓く地球・社会・人への可能性」として名古屋マリオットアソシアホテルで開催された。 第4回目となる今回は、「『地球の未来のために』―高速鉄道はなにができるのか」をテーマとした。参加者数は、フィンランド鉄道、フランス国鉄、ドイツ鉄道、インド国鉄、イタリア鉄道、韓国国鉄、台湾高速鉄路、ヴァージントレインズ(イギリス)、および国際鉄道連合(UIC)の海外からの30人を含めて約450人。石原慎太郎東京都知事を来賓に迎え、主催者側からはJR東海の松本正之社長、JR西日本の垣内剛社長らが参加した。 冒頭、JR東海松本社長が、21世紀の地球規模の問題の中で、高速鉄道は都市間大量輸送機関として環境やエネルギー面にきわめて優位を発揮するとの本会議の主旨を交えてあいさつした。このあと、第一部は「科学技術は地球文明を救えるか」という大きなテーマで、環境問題で著名なアースポリシー研究所(アメリカ)のレスター・ブラウン氏が「持続可能な社会に向けて」を基調講演、水の重要性と地球温暖化による食糧への甚大な影響を述べた。続いて、東京大学大学院松井孝典教授の司会で基調講演を受けた特別セッション、および環境やエネルギー問題に対する科学技術の可能性についてのセッションと進み、長い目で見た研究活動の重要性などを訴えた。 第二部は「環境の世紀における高速鉄道の使命」をテーマに、一橋大学大学院杉山武彦教授を座長としたセッション。フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、およびJR2社などが、それぞれの国・地域の高速鉄道の実情や課題、取組みなどを紹介した。 この中でフランスは、TGVの20年余りの技術進化や商業的成功、新幹線同様に死亡0の実績を披露し、欧州での高速鉄道のリーダー性を強調した。ドイツも、アウトバーンや航空主体からの意識変化に時間を要したが、ICEの実現で鉄道が市場シェアを拡大したと紹介、すでに2005年度のCO2削減目標を達成しており、今後のトラック規制など、環境面のリードを披露した。 一方、アメリカは、アムトラックが長距離旅客列車を運行するものの、需要が少ないために環境負荷はかえって大きく、中・短距離輸送への再編を進めること、そのさいも新規の高速線は建設しないだろうとの予測を示した。むしろ貨物分野で大きく鉄道を活用し、利便性・効率化などの改善を進める。イギリスは、多数の民間会社に分割されたことが響き、航空機もクルマもエネルギー効率や環境性を著しく向上させており、鉄道は突破口が見出せないと実情を語り、国による実情や評価、鉄道活用策の違いが浮き彫りになった。 (2005年1月号)
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