合成まくらぎ

 枕木は、レールを固定し正確な軌間を保持するとともに、列車の過重を道床に分散させる重要な役割を担う。材質は当初は読んで字のごとく木だったが、高速化のうえで耐久性や堅牢性にすぐれたPC(プレストレスドコンクリート)が一般的になり、それにともない「まくらぎ」や「マクラギ」と表記されるようになっている。

 だが、PCまくらぎは木に比べて非常に重いため橋梁部分、また、その重量ゆえに施工性を考えると、長くサイズの異なるものを必要とする分岐器部分には不適格で、従来どおり木が使われていた。

 一方、木のまくらぎは、軽量で施工性は高いものの水を吸ったり乾燥を繰り返すことで、ひび割れたりして、その耐久年数は15年程度とされる。また、防腐処理材の環境問題も取り上げられるようになった。

 こうした問題点を解消するものとして、近年多く使われるようになったのが、合成まくらぎである。積水化学工業(株)が1974年に素材を開発、1980年に国鉄鉄道技術研究所(現鉄道総研)との共同研究としてまくらぎを試作、環境のきびしい関門トンネル内や、海沿いの羽越本線三面川橋梁に敷設した。以来5年を経て、経年変化もないと報告されたことから採用する社が現われてくる。

 以後、量産により、高かった製造コストも次第に下がってきた。10年後、15年後の品質調査でも問題は見られなかった。

 材質はガラス長繊維強化プラスチック発泡体(FFU)といい、硬質ウレタン樹脂をガラス長繊維で強化したものという。一般に聞くガラス繊維強化プラスチック(FRP)は小さなガラス繊維をランダムに集積したマットをプラスチックで固化するのに対し、FFUは同一方向にそろえた長いガラス繊維を束ねて発泡ウレタンで固化している。

 このようにしてできる合成枕木は、木まくらぎとして一般的なブナ材とほぼ同じくPCまくらぎに対して1/3の重さで、施工性が高い。強度はもとより、吸水性がないため絶縁低下も発生せず、締結ボルトなどの位置を変えるさいも元の穴を樹脂で容易に埋めることができ、ここからの吸水や腐食を心配する必要がない。また、長いものを必要とするさいには現場接合もでき、狭隘な場所での作業性にすぐれる。

 表面が平滑なためバラスト軌道に敷設したときやや滑りやすい点があったが、これは抵抗性を高める部材を底部に貼り付けることにより改善され、弾性材をつけたものや、ケーブルの溝を彫ったもの、曲線用に上面に勾配をつけたものもあり、加工性が高い。埋め栓が容易なことから再利用も可能で、PCまくらぎと同等の50年以上の耐久性があるため、廃棄物の削減にも貢献できるという。

 こうした性能をもつ合成まくらぎは、長野新幹線では高崎駅北方の上越新幹線分岐部分をはじめ、当初から全面的に採用した。東海道新幹線でも分岐器部分と橋梁部分が、ほぼ木から置き換えられている。一方、東北・上越新幹線では、耐用期限との関係から、まだ、木まくらぎが多い。在来線でも交換が進められており、とくに大都市圏と橋梁で、改善のテンポが早められている。

(2002年12月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:56 JST