ローカル線活性化の旗印 増える国鉄色車両の復活

 数年来、ファンのあいだでは国鉄型車両が人気で、なかでも昭和40年代に各地で見られたオリジナルの国鉄色を施した車両に熱い注目が浴びせられている。1987年のJR発足以来、各社は地域の実情にあわせた新型車両を製造し、それは今も増え続けている。これに反比例するように国鉄時代に量産され、またJR化後もその設計に基づいて作られた、いわゆる国鉄型車両は少なくなってきているが、現在、貨車を除いてもまだ6割近くが国鉄型車両で運転されている。

 1999年まで残ったJR西日本木次線のキハ52形が唯一、クリームと赤の一般形気動車色のまま残っていて、ファンの間では大変有名であったが、今日のようなブームが起こったのは、2000年8月26日に山陽新幹線博多開業25周年を記念して、在来線の新大阪〜博多間に485・489系ボンネット形車両で運転されたリバイバル「はと」からではないだろうか。赤とクリーム色の国鉄色に塗り分けた9両編成が7月4日14時の発売開始と同時に満員となり、ジョイフルトレインに負けないほどの集客力があることを知らしめた。これに続いてJR九州ではミレニアム記念で485系・475系・キハ66形などを国鉄メークに復元した。そこにはイベント的な要素を営業の向上に結びつけたいとする、会社側の姿勢が見えてくる。

五能線に朱5号気動車が登場

 9月25日、JR東日本秋田支社に「朱5号」「首都圏色」と呼ばれるオレンジ系を全面に施した気動車が復活した。前述のツートンカラーの次に採用された塗色で、国鉄時代は、一般形気動車のカラーとして全国各地を走り回り、レールファンだけでなく一般にもたいへんなじみ深い。今回、国鉄色に変更された車両は、南秋田運転所配置のキハ40形522号、キハ48形505号、キハ48形1520号の3両。それまでは白をベースに、世界遺産である白神山地をイメージさせる、中央部が三角形にカットされた青帯を巻いた「五能線色」が施されていた。3両が復元されたのは、基本的に2両単位で運転し、1両は予備とするためである。

 車両運用は固定されている。月曜がA71運用で始まり、日曜日がA77運用というパターン。この運用はおもに五能線の北側を行き来するものだが、木曜日は朝晩、奥羽本線秋田〜東能代間の架線下を走り、日曜日には日中、弘前から東能代へ南下する。この運用パターンにしたのは、昼の間に五能線全区間を走る日を日曜日にすることで、多くの人に五能線のすばらしさと、国鉄メーク気動車の旅を味わってほしいからとのことである。

 なお、本誌発売時点では、朱5号気動車はキハ40形522号の1両のみのため、既存の五能線色車両と併結される。キハ48形505号は10月24日、1520号は2004年1月20日に工場出場の予定。また、秋田支社では朱5号気動車の復活運転にあわせて、記念オレンジカードを発売した。

 五能線は沿線に先述の白神山地を抱え、日本海に沈む夕陽の美しさは比類なしと讃えられ、JR東日本もキハ48形「リゾートしらかみ」2編成を運転し、観光路線として活性化を図っている。しかし、今回の朱5号気動車は五能線を舞台とした観光列車の流れからは外れている。

 朱5号気動車は、SLが人気を集めるレトロブームの中で、秋田に目を向けてもらうための話題づくりの一環として手がけたものだ。秋田支社管内に非電化区間は五能線と男鹿線があり、そのうち五能線のほうが長距離で、しかも運用を組みやすかった。朱5号気動車の運用ダイヤは、秋田支社のホームページで公開されている。

 南秋田所には特急「かもしか」用の485系が3両編成3本、増結用の2両編成4本在籍するが、これを国鉄色に復元する予定はないという。

レトロブームの影にファン頼み

 秋田の国鉄色気動車は走り始めたばかりで、評価のほどはこれからであるが、ひとあし早く2001年から国鉄色気動車を運転しているJR東日本盛岡支社は、その予想以上の反響に驚いたという。東北新幹線八戸延長開業を1年後に控え、花輪線の活性化を趣旨とする施策を練っていたちょうどその時期に気動車が2両全般検査に入ったことから、この車両を国鉄色に塗り替えてみようと始まったもので、今はキハ58形6両、キハ52形2両、キハ40形2両、キハ48形1両が国鉄色に復元され、花輪線だけでなく山田線・岩泉線(キハ58・52形)、八戸線(キハ40・48形)で活躍している。復元後、全国から問合せの電話が日常業務が手につかぬほど殺到したため、ほどなく 盛岡支社のホームページ で運用ダイヤを公開した。

 このダイヤを見て、全国から乗車・撮影目当ての客が多数訪れた。こうした盛り上がりを見て盛岡支社も、フォトコンテストや国鉄色気動車を使ったイベント列車を企画した。自治体も好意的に受け入れ、2年前の「鉄道の日」に花輪線で運転したイベント列車への協力もあった。現在は登場当初ほどのにぎわいはなくなったものの、国鉄色気動車の人気はまだ高く、今秋、岩泉線に入る全車指定席の快速「なつかしのキハ52・58号」は発売後すぐに満席に近い状態になった。

 このように、イベント列車でいちばん集客力があるのは、実は国鉄色車両を使った「リバイバル列車」やSL列車、または「さよなら列車」なのだ。乗客はレールファン、もしくは鉄道に興味のある人々で占められるが、今年の春から夏にかけての165系急行形電車のリバイバル運転、夏休み期間にオリジナル色の583系で仙台〜東京間を走った「ムーンライト東京」、9月16日の東海道新幹線100系電車さよなら運転などの指定券はプラチナチケットと化した。これらを撮影する人も沿線に鈴なりであった。

 鉄道の利用者が全体的に減っている昨今、ローカル線はいっそう厳しい状況にあり、事業者側はレールファンの注目を集めることを増収の一手段としているようである。また、乗車あるいは撮影にレールファンがやってくることで、地域になにがしかの恩恵をもたらすことも地元自治体は歓迎している。沿線の利用者にとっては国鉄色であろうが新塗装であろうが日常の狢瓩任△襪ら、塗装が変わっても影響はない。

 検査に会わせてカラーを昔のものに塗り替えるという、費用が全くかからない施策で、ローカル線の活性化が期待できる旧塗色の復活は、JRだけでなく私鉄でも多くの例を見るようになっており、これからも続きそうである。

(2003年12月号: ローカル線活性化の旗印 増える国鉄色車両の復活)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:56 JST