山手線に導入された 最先端の情報サービス (VIS)

 JR東日本の首都圏路線にE231系が続々導入されており、山手線にも4月21日から500代が3編成運転されている。山手線用E231系の特徴の一つは、列車運行に関わる情報やニュースの提供をはじめ、番組やコマーシャルなども車内に表示する情報提供装置(Visual Information System)を採用したことである。このVISは、各側扉上部に2台ずつ設置された15インチ液晶モニター、動画を記憶するメディア中央装置、静止画を記憶するメディア端末装置、映像信号を変換する変調器やミキサーなどで構成され、さまざまな情報を乗客や乗務員に表示してゆくものである。

意外と車内がうるおう大型液晶モニター

 在来の山手線205系の6扉車サハ204形(10号車)も、側扉上部に液晶モニターが1台ずつ計12台設置されている。こちらは9インチと、E231系のものに比べると約半分の大きさである。これは1990年にサハ204形が登場したとき、ラッシュ時に座席を収納する「椅子なし車両」のマイナスイメージを緩和しようと始められたサービスである。天気予報やニュース速報の文字情報だけでなく、テレビで放映されるコマーシャルムービーと同じものが流れることがある。音声は出ないが、混雑する車内で関心度は高かった。ただ、視野角が狭く位置によっては画面が見にくいのが難点であった。

 E231系の液晶モニターは、サハ204形に比べ視野角も広がって見やすい。汎用品を採用したが、液晶パネルとしては最高の明るさのものを採用した。解像度は1,024ドット×768ライン(XGA)、輝度はパソコン用液晶モニターの主流が200カンデラのところ、400カンデラという。

 コンテンツの内容は向かって左側に広告や文字放送、なかには英会話のワンポイントレッスン、時節がらサッカーのワールドカップ関連情報が流れる。1ロールは約12分30秒。運転開始して間もないことなので、今後は(株)ジェイアール東日本企画と共同で内容の拡充を図ることになっている。

 特筆されるのは右側の液晶モニター。行先、次の停車駅、ホームの階段・エスカレータの位置、現在停止している駅からの所要時間(約半周分)、さらには列車遅延の状況、JR各線の運行状況など、まさに乗客がいちばんほしい情報が表示される。例えば外回りの場合、東京までの所要時間は、上野停車時は7分と表示されるが、秋葉原では4分となる。同じように上野停車時は渋谷までが表示されていたものが、秋葉原では代々木まで伸びる。さらに前述のように各駅の階段の位置なども表示される。これには、バリアフリーの意味合いある。

 右側モニター用には、内回り・外回りの合計で表示枚数で600枚近いデータが蓄積されている。今後、東京臨海副都心線大崎延長、あるいは東海道新幹線品川駅開業など大きな変更点があると、駅情報のデータも更新されてゆくことになる。

無線で人手を介さずデータを更新

 サハ204形の場合は、1編成に1両ということもあり、動画コンテンツの更新は、コンテンツを記録したメディアを手作業で入れ換えていた。しかし、E231系500番台では完全に自動化され、動画コンテンツについては山手電車区に留置中に2.4GHz帯のSS無線で2週間に1回の割合で、速報性が要求される文字情報は拠点駅(現在1ヵ所、順次増加の予定)停車中にSS無線で行なわれる。今後、無線装置の高速化が課題とされている。右側画面に表示する運行情報の更新は、公衆携帯電話回線を用いたパケット伝送により行なわれている。

 アンテナで受信したデータは、1号車に設けられた送受信装置を通り、動画コンテンツはメディア中央装置へ、静止画および運行情報はTIMSを経由しメディア端末装置へ蓄えられる。前述のTIMSで記録している車両データはこの逆で、TIMS→送受信装置→アンテナというラインを流れる。

 アンテナと送受信装置は常磐快速線に投入中のE231系にも搭載されているが、このタイプの車両は車内表示装置が2段のLEDであるため、山手線用E231系ほどはビジュアル面できわだったものではない。

 車内で表示される運行情報は、時刻表情報サービス(株)が提供するもので、JR東日本のホームページで流れるもの、あるいは携帯電話のコンテンツで配信されるものと、もとは同じなのだ。この運行情報は、時刻表情報サービスが一つずつ手作業で入力しデジタルデータ化しているもので、VISのコンテンツ、ホームページのコンテンツの両方に変換しやすい点が認められた。なお今回採用されたシステムと、東京圏輸送管理システム(ATOS)は連携しておらず、現在、各駅ホームの表示装置などに流れる運行情報とは別系統の情報である。

 また、VISはE231系電車の売り物でもある列車情報管理装置(TIMS)との連携も考慮されており、VISの通信機能を活用してTIMSで記憶している当該車両の乗車率や故障記録などのデータを地上へ送信し、メンテナンスに役立てる機能も備えているほか、他線区の運行情報は運転室にも表示される。さらに、運転指令をTIMSに蓄積保存することも考えられている。現在は、無線で伝えられている指令通告を、モニターの文字情報でフォローすることになる。

 E231系500代は6月以降、毎月平均1編成ずつ増えていく予定であるが、山手線以降、他の線区に投入される車両に同様の装置を設置する予定はないようだ。システム自体が高価なため、「ドル箱路線」に限っての施策と言えるだろう。

(2002年7月号: 山手線に導入された VISによる最先端の情報サービス

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:59 JST