青春18 きっぷ

 毎年、冬休みや夏休みになると発売される「青春18きっぷ」。全国のJRの普通・快速列車の普通車が1日中乗り放題となる、まさに格安旅行をのんびり楽しむためのトクトクきっぷである。鉄道好きや旅行好きだけでなく、近年はビジネスマンや主婦層にも使用する人が多く、人気の定着ぶりをうかがわせている。

 ただし、普通・快速列車の指定席を利用する場合は指定券が必要であり、特急や急行、グリーン車や寝台車に乗車するときには「青春18きっぷ」は使えず、別途、乗車券を用意する必要がある。

 「青春」や「18」という響きから、なじみのない人には利用に年齢制限があるように思われがちだが、そのような制限はなくだれでも使うことができる。しかし、発売・使用期間は春・夏・冬のいずれも学生の休暇期間に限定されており、当初の主たる利用層が考慮された設定になっている。

 「18きっぷ」と通称されることが多いこの乗車券は1982年3月に初めて売り出され、今年で20年目となる。利用者の「国鉄離れ「が目立ち始めた1970年代後半、乗客の増加をねらって熟年夫婦層を明確な対象にした「フルムーンパス」とともに、年代別の旅行商品として発売されたのが始まり。当初は「青春18のびのびきっぷ」の名で、当日限り有効券が3枚と2日間有効券が1枚の計4枚綴り、値段は8,000円であった。1枚あたりで見れば2,000円で、日数で考えれば1日あたり1,600円の格安ぶりだった。青少年に利用してもらおうと、胸に着ける布製のワッペンまで添付されていた。続く7月に発売された第二弾では、当日限り有効券が4枚と2日間有効券が1枚の計5枚となり、価格は10,000円となった。  好評により発売が継続され、1983年2月に「青春18きっぷ」と名称が改められたが内容は変わらなかった。翌1984年には値段はそのままだが、2日間有効券をなくし当日券のみ5枚綴りとなっている。1986年に11,000円に値上げされ、1989年7月発売分は消費税が加算されて11,300円となった。

 また、1995年の発売までは複数の券片式だったが、1996年春から1枚ものとなり、複数の人数で同時に使用するときは同一行程が条件となった。さらに消費税が5%に改定されて11,500円となり、これが現在の状況である。

 現在でも1日あたり2,300円で普通・快速列車に乗り放題というのが変わらぬメリットであるが、列車のダイヤ面でも状況は変化しており、最近は幹線を走る抜くような長距離普通列車の本数が減ったため、長距離の移動には何回もの乗継ぎが必要になった。そのなかで快速「ムーンライトながら」や「ムーンライトえちご」などは貴重な長距離夜行列車であり、利用の対象とする人が非常に多い。

 普通運賃で2,300円といえば、東京起点の東海道本線で吉原以西、東北本線で矢板以北となり、これ以上乗ればもとがとれることになる。また、普通列車の速度が向上したため、東京を常識的な8時すぎに出発しても、途中、新快速を乗り継ぐことにより17時過ぎには東海道本線を走破して神戸に着くことができるのだから、普通列車といえども速度はあなどりがたい。  なお、JR東日本・JR東海管内では、すべてコンピュータ処理によって発券されているが、それ以外の会社の駅員配置駅で、かつ、乗車券発行機やマルス端末を設置していないところでは、今も印刷済みの以前のタイプの乗車券が発売されている。愛好家はわざわざこれを入手するという。

(2001年3月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:00 JST