代替燃料活用実験

 環境問題から代替資源活用の取組みが一部で実施されているが、鉄道でもユニークな試みが見られる。限りある鉱物資源の問題や環境問題から広くバイオマスの利活用が模索される中での取組みで、「バイオ(Bio)」は生物、「マス(Mass)」は固まりを意味し、生物資源を指す。今回、大井川鐵道でバイオマス燃料の一つであるオガライト炭を使った蒸気機関車の走行実験が行なわれた。

 オガライト炭は、製材過程で発生するオガクズ(鋸屑)を高温・高圧で加工して棒状の固形燃料としたもので、一般生活やレジャーに用いられ始めている。従来、オガクズはたんなる廃棄物であったが、これを活用することで資源となる。また、生物資源である樹木は鉱物資源に比較すると短期間で再生産され、森林整備に欠かせない間伐で生ずる間伐材の利用にもつながるため、木質バイオマス燃料は注目を集め、研究も進められている。

 今回、大井川鐵道で行なわれた実験は、静岡県環境森林部と志太榛原農林事務所が主体となり、「持続可能な山村づくり事業」の2004年度事業の一環として取り組まれた。地域資源を活用した循環システムの構築というねらいのもと、地域の特色を考慮して森林資源に焦点を当てるとともに観光業との連携を目指し、蒸気機関車を運転する大井川鐵道が実験フィールドとして事業に協力したもの。技術面では、地元のヒラテ技研が参画している。

 本番の走行実験は2005年2月9日に開始された。C10形8号機を用い、初回は長さ5cmに切ったオガライト炭100%で新金谷駅構内を走行させたが、カロリー不足や火床における火種形成の問題が明らかになったため、以後、延べ2日にわたり石炭と混合し、5対5、さらにオガライト炭4に対し石炭6の比率として構内走行実験を進めた。さらに4回目となる3月17日は、同機の単機運転で新金谷〜家山間の本線走行を行なった。構内運転で得た結果から4対6の比率の混合炭とし、最急勾配16.7‰を含む約14kmを走行、ダイヤどおりの運行に成功した。

 ただし、実際に営業運転に至るまでには、現状では石炭の約6倍というコストの問題や着火が石炭に比べて遅く投炭のタイミングが異なるなどの課題も挙げられる。今後の持続的な研究に期待されるところである。

 一方、千葉県の第三セクター、いすみ鉄道では、房総半島特産の菜ノ花を沿線の約3.3万平方mに植えて春の観光誘致を図っているが、この菜ノ花から採れる菜種油を軽油の代わりに使う構想が立てられている。大多喜町と共同で計画するもので、休耕田でも菜ノ花を栽培し、採れた菜種油を学校給食などの調理に使用したのち、さらにその廃油を原料としてバイオディーゼル燃料(BDF)とするものである。なお、滋賀県東近江市や京都市では、てんぷら油を回収し、BDFゴミ収集車やバスの燃料とする実証実験を行なっている。

(2005年7月号)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:01 JST