大阪外環状線

 東海道本線吹田信号場から片町線鴫野、放出を経由して関西本線久宝寺まで、片町線の支線としての単線非電化(一部電化)貨物線があり、城東貨物線と呼ばれている。この既設貨物線を最大限に活用し、複線電化して新大阪〜久宝寺間の旅客線とする計画が大阪外環状線鉄道整備事業である。大阪市東部地域の鉄道は、都心を核に放射状に延びているが、各路線を有機的に結ぶ南北方向の路線はきわめて少ない。

 そこで城東貨物線を大阪外環状線として整備して南北の旅客交通を確保するとともに、片町線(学研都市線)や関西本線(JR大和路線)と新幹線の直結ルートを確保し、これにより都心ターミナルの混雑緩和にも役立てようとする計画である。

 城東貨物線の旅客線化構想は半世紀も前からあったものだが、1989年の運輸政策審議会第10号答申で2005年までに整備することが適当であるとされた。これを受けて1996年度政府予算で、大都市の貨物鉄道の旅客線化を行なう第三セクターに対する補助として、「幹線鉄道等活性化事業費補助」が認められ、事業がスタートすることになった。同年11月に大阪府・大阪市・東大阪市・吹田市・八尾市とJR西日本の出資による第三セクター会社〜大阪外環状鉄道(株)が設立された。大阪外環状鉄道(株)は第三種鉄道事業者として建設主体となり、開業後はJR西日本とJR貨物が第二種鉄道事業者として運営主体となる。JR東西線のインフラを関西高速鉄道が保有するのと同じ、いわゆる上下分離方式である。

 路線延長は新大阪〜久宝寺間約20.3kmで、途中は既存路線との接続・交差個所を中心に、西吹田・淡路・都島・野江・鴫野・放出・高井田・永和・俊徳道・柏田・加美の11駅(既設JR駅以外は仮称)を設置、新大阪〜淡路間約3.2kmは複線電化の新線を建設、淡路〜久宝寺間約17.1kmは線増と電化(淡路〜鴫野間既設線は電化済み)を行なう。

 なお、新大阪方の新線と吹田方の既設貨物線とは、神崎川南方で分岐する。鴫野〜放出間は片町線の上下線間に大阪外環状線を挟む形となり、複々線となる。また、久宝寺駅も関西線の間に挟まる形として、乗換えの容易な有機的なネットワークを形成する。加えて、俊徳道〜加美間の既設線は踏切が非常に多いため、平野経由百済貨物駅までの分岐ルートとあわせて都市計画事業としての連続立体交差化事業を行なう。

 これらのうち、南側2/3にあたる久宝寺〜都島間約14.9kmは1999年3月に工事施行認可が下り、久宝寺〜放出間は本年内の全区間着工をめざしている。一方、北側の都島〜新大阪間は昨2001年12月に工事施行認可を申請しており、現在は認可を待っているところである。現在のところ、新大阪〜久宝寺間全線を2005年度末に完成させ、2006年度首に営業開始する予定。

 なお、仮に放出〜久宝寺間のみの開業となっても、関西線方面から片町線、JR東西線経由で大阪都心方面、神戸方面との新たな輸送チャンネルが形成される。申請された事業計画では、1日約140本の旅客列車を運転、ラッシュ時には8両、ラッシュ時以外は4両編成で輸送することとなっている。

(2002年10月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:02 JST