鉄道の日

 毎年10月14日は「鉄道の日」である。今年8年目を数える「鉄道の日」は1994年に制定されたが、それまでは「鉄道記念日」と称していた。1872年(明5)、新橋〜横浜間に日本最初の鉄道が開業したのが10月14日(当時は陰暦9月12日)で、これにちなみ、鉄道開通50周年の1922年(大11)に鉄道記念日として定めたのに始まる。以来、国鉄からJRへ継承されて祝賀行事などが行なわれてきた。

 しかし、鉄道はかつてのような陸上交通を一手に引き受ける交通機関ではなくなって、地方を中心に鉄道離れが加速度的に進み、大都市でも輸送量がピークを築いたのち下降に向かい始めた。そこで、日本の発展に欠かせない基幹産業として、また最も代表的な公共交通機関としての鉄道の社会的・経済的役割を自らも見つめ直し、対外的に大いにアピールするため、運輸省(現国土交通省)が事業者等に働きかけて、改めて制定されたのが「鉄道の日」である。

 従来の鉄道記念日は国鉄〜JRだけのものという印象が強かったが、「鉄道の日」は民鉄各社や関係団体等を加え、鉄道業界全体の記念日に発展させたことが大きな変化となった。また、鉄道記念日の行事には功労者の表彰など内部的なものが多かったが、今日、積極的なPRや利用の呼びかけを行なう気運が醸成され、各地各社で、広く一般に向けたイベントが展開されるようになった。

 行事の中核は、鉄道の日実行委員会(本年の会長は中村英夫運輸政策研究所所長)による「鉄道フェスティバル」で、東京・日比谷公園での開催が定着している。JR・大手民鉄各社に加え、中小事業者や関連事業者が園内にブースをつらね、鉄道グッズ販売や展示、ステージショーが行なわれ、毎年10万人以上を動員している。また、日比谷公園以外でも鉄道映画祭や交通総合文化展、シンポジウムなどを実施している。そのほか、各鉄道ごとに車両基地・工場の公開や展示、記念列車の運転、車両の体験運転、写真展、映画会、講演会などを協賛行事として、それぞれ趣向を凝らして実施しており、次第に定着してきたところも多い。以前は地元の輸送だけを地味に行なってきた中小事業者も、なんらかのイベントをしかけて積極的にアピールする機運が醸成されたことは、大きな効果といえる。

 また、国土交通省下の各運輸局単位では関東運輸局が「関東の駅百選」を実施したのに触発され、中部運輸局と近畿運輸局でもそれぞれ駅百選を継続しており、選定された駅は、さまざまに紹介されている。

 事業者サイドの行事としては、「鉄道の日記念式典・祝賀会」が都内のホテルで毎年催され、鉄道事業に貢献してきた関係者に対し国土交通大臣から鉄道功労者として表彰が行なわれている。このほか、JRを中心に社内表彰や殉職者法要などが、この日前後に数多く行なわれている。

(2001年12月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:03 JST