鉄道沿線からの森づくり

 植物が生き生きと緑を茂らせ、梅雨を控えて樹木にとっては環境が整う6月、JR東日本の東京周辺では横浜線鴨居付近、京浜東北線王子付近と浦和電車区、青梅線昭島付近で、「鉄道沿線からの森づくり」と称する植樹が行なわれた。

 6月4日に行なわれた王子駅付近の植樹の場合を例に見ると、場所は京浜東北線王子〜東十条間の線路脇で、幅2〜4m、長さおよそ200mのスペースにわたり、オオムラサキツツジ・ドウダンツツジ・キリシマツツジ・サザンカ・ハナミズキなど8種類の木、合計2,000本が植えられた。線路に近いことから、高く成長し生い茂る木はあまり適さず、また、車窓から美しい花の色が楽しめることも重要なポイントのため、過去にもツツジやツバキなどが選ばれた。

 今回、作業にあたったのはJR東日本グループの社員140人のほか、招待者として地元北区の区長はじめ町内会の人々や付近の小学校児童ら60人で、いずれもボランティア活動である。また、苗木を購入する費用もJRグループ社員の募金による。

 こうした「鉄道沿線からの森づくり」活動は、1992年、ブラジルのリオデジャネイロで「国連環境開発会議」(地球サミット)が初めて開催された年に、JR東日本は創立5周年の記念事業としての意味も含めてスタートさせた。今年はそれから10年目を迎えるが各支社単位で計画され、過去9年間にJR東日本の沿線各地計109ヵ所に植えられた本数は19万本になる。

エコロジー

 JR東日本は、地球温暖化に代表される地球環境問題が人類にとってきわめて大きな課題であるとされるなか、鉄道というエネルギー効率に非常に優れた乗物を提供する企業として、まずは自ら環境やエネルギーの重要性を認識するという立場から植樹活動を始める。この年、エコロジー推進委員会を社内に発足させた。

 駅や車内でのゴミの分別収集、その再資源化、切符や定期券紙のトイレットペーパーへのリサイクル、さらに消費エネルギーの少ない車両の開発や、製造時点からリサイクル性にとんだローコスト車をめざすなど、現在では各社ともに当然としてかかげる項目をいちはやく取り入れた。究極の目標として、ゴミも無駄なエネルギーも鉄道の外に出さず、すべてを自ら再利用するゼロエミッションを掲げている。国際的な環境規格であるISO14000シリーズの取得でも先陣をきっており、こうした取組みは現在でも鉄道会社のなかで最も積極的と評価されている。「鉄道沿線からの森づくり」は、こうした企業姿勢の一環に位置付けられた活動となっている。

 なお、鉄道と植栽は昔から非常に密接な関係をもち、防雪林・砂防林などは最も重要な先人の知恵として、あるものは鉄道記念物にも指定されている。湿地帯では育てた鉄道林が水を吸い上げ地盤を安定させる効果もある。現在の植栽は防雪林などとは意味が違うが、築堤などでは崩壊を防ぐ効果があり、密生すれば吸音効果もある。

(2001年8月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:04 JST