電子連動装置 †駅構内では多くの線路が集中・分岐しているが、列車運転に必要なすべての進路構成ができるようになっている。その線路の分岐部分や交差部分には転轍器(分岐器を転換する装置、あるいは分岐器そのもの)が設置され、進路を指示するための信号機・合図器・標識などが設けられている。この一方で、列車の発着や車両の入換なども効率的にできるだけ並行して行なうには、転轍器の転換や信号機の取扱いが複雑になり、錯綜してくる。これを操作する者の注意力だけに頼っていると事故につながりやすく、能率も悪い。 そのため、信号機や転轍器の相互間に関係を設け、信号機の防護区間(受持ち範囲)にある転轍器が列車の運行方向に開通しているときのみ、その信号機に進行信号を現示し、また、進行を指示した以上、たとえ取扱い者がまちがった操作をしても、その防護区間内の転轍器は転換できない仕組としている。これを「鎖錠」という。そして、これらの信号機・転轍器の取扱いてこが相互に関連し、その取扱いに一定の順序があり、かつ鎖錠関係のついていることを「連鎖」と言い、連鎖関係を保って動作することを「連動」と言う。 腕木式信号機が使われていた初期の連動装置は、連動器箱の中で「切欠き」と「駒」が組み合わさって動作した機械連動であったが、大正期に入って電気連動が主流になった。さらに高度化してリレー(継電器)ロジックによる継電連動装置に替わり、高度な安全が確保できるものとして全国的に普及したが、近年になって、マイクロエレクトロニクス(ME)技術の発達に伴いマイコンを使用したものが台頭した。これを「電子連動装置」と言う。継電連動装置は数多くの電磁リレーの組合せで数万に及ぶ電気回路を構成するものであるが、この内容をマイクロコンピュータを駆使してソフトウェアで処理する方式として、高速性に優れ、安全性・操作性・保全性などを飛躍的に向上させたものである。1985年に東神奈川駅構内に採用されたのが、国鉄〜JRにおける実用化の最初である。 電子連動は、列車や入換車両の進路設定の自動化、現発通告(発車や通過時刻を関係個所に伝えること)の自動化、列車運行表示などの機能も内蔵している。そのため、平常時は制御盤の監視・操作を省略でき、人が介入するのは異常時のみとすることができる。 一方、継電連動の普及時には、ローカル線の運転業務を合理化する当初目的でCTC(列車集中制御装置)も普及した。ただし、これは、1ヵ所に集中化されても操作は人手を介していた。そのため、大きな駅はそこだけで扱い量が膨大になるため、複数駅をまとめることができず、幹線では逆に集中制御化は遅かった。また、CTC化された線区でも大駅は独自の取扱いとして切り離されていた。 そのため、コンピュータを使った新しい運行管理システムとして、あらかじめプログラミングしたデータに基づき、時間経過とともに自動的に進路を構成してゆくPRC(自動進路制御装置)が誕生し、主流として導入されるようになった。これにより大駅や幹線への導入も可能になり、現在は駅に分散させたタイプのPRCが広まっている。 これらのPRC制御に用いられているのが、最新世代の電子連動で、近年のコンピュータ技術を取り込み、無線や光ネットとの接続が容易でシステムの拡張性が格段に高まった。従来の電子連動装置は専用のハードやキーボードを用いていたが、新型装置は汎用のものを用いて操作性も高く、保守関係や旅客案内システムなどとも一体化し、さらに故障を自動検出してそのデータを保全するなど幅広い情報網を築いている。このため、駅だけでなく車両基地にも導入され始めている。機械式、電気式、継電器式、それからME式と分類すると、現在は情報信号式の第五世代の連動装置と位置付けることができる。 (2005年5月号)
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