独立行政法人

 2002年12月11日の第155回臨時国会参院本会議で、2003年10月に日本鉄道建設公団と運輸施設整備事業団を統合して独立行政法人化するための「鉄道建設・運輸施設整備支援機構法」が可決成立した。

 日本鉄道建設公団は1964年(昭39)に発足し、経済基盤の強化や地方格差是正を目的に新幹線や大都市を中心に鉄道整備を続けてきた。1998年からは、国鉄清算事業団の解散にともない以後の土地処分や株式処分の業務を暫定的なものとして引き継いでいる。

 一方、運輸施設整備事業団は1959年(昭34)に国内旅客船公団として発足した船舶整備公団と、1991年、JR3社に対する新幹線施設の譲渡代金の一部を財源に新幹線鉄道保有機構を改組、発足した鉄道整備基金を1997年に統合して生まれた組織である。しかし、それぞれ以前のように積極的な事業展開ができなくなった時代背景もあり、今回、さらに独立行政法人として統合されることになった。ここに言う独立行政法人とはどのようなものか取り上げる。

 独立行政法人とは、行政改革の一環として行政のスリム化、効率化を図るため、従来は各省庁が行なってきた業務のうち、政策立案部門は残すものの執行あるいは実施部門を切り離して、自発的な経営努力を促す制度である。モデルは1988年、イギリスで導入された外庁制度と言われる。

 1996年の行政改革会議で提案され、1998年に「中央省庁等改革基本法」が成立して正式に決定された。これにより国の89の事業・事務の独立行政法人化の方針を定めた「中央省庁等改革の推進に関する方針」が決定され、独立行政法人の運営の基本と共通的な事項を規定した「独立行政法人通則法」と、名称・目的・業務範囲等に関する事項などの個々の独立行政法人を設置する法律(個別法)が適用されることとなった。

 独立行政法人の性質は、国から独立した法人格を持ち国の仕事を遂行するものの、必ずしも国が直接行なう必要のない事業を行なう出先機関や検査事務が対象となっている。例えば、国立の美術館・博物館や病院、研究機関などが該当する。  設立にあたっては、少なくとも長1人と監事を置く。いずれも担当の主務大臣によって任命される。

 運営については、従来、国の行政機関は明確な目標設定、業務実績の評価を行なう仕組は導入されていなかった。これに鑑みて、主務大臣が3〜5年の中期において定めた目標を定め、大臣の許可を受けて公表する。その後、これに従って単年度計画を定め、大臣に届けて公表することになっている。また、単年度および中期を経過したさいは、府省の独立行政法人評価委員会と、政策評価・独立行政法人評価委員会の業績評価を受けなければならない。

 このように国の監督下に置かれるものの会計面では国から交付される運営費交付金は使途を特定せず、弾力的・効果的に使用できる。経営努力により生じた剰余金についても、中期計画であらかじめ定めた範囲で使用できるようになっている。

 また、国の行政機関の組織、定員なども法令等による統制に基づき行なわれ、機動的・弾力的な運営が困難である。このため独立行政法人制度では、基本的枠組の範囲内で独立行政法人が内部組織を決めることができ、その職員数は定員管理の対象外とされている。

 国土交通省関係の独立行政法人は2003年1月現在、土木研究所、建築研究所、交通安全環境研究所、海上技術安全研究所、海技大学、航空大学など12あり、各省庁合計では59を数える。

(2003年3月号)

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (略称:鉄道・運輸機構) 〔http://www.jrtt.go.jp/

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:07 JST