認定鉄道事業者制度

 認定鉄道事業者制度は、1999年5月に公布、2000年3月1日から施行された改正鉄道事業法において、運輸省(当時)令である鉄道事業法施行規則の一項目として制定された。

 鉄道事業法は近年、利用者利便の増進、事業者の自主性・主体性尊重の観点から改正が進められている。このときの他の改正点をあげると、次のものがある。

(1)鉄道事業への参入が従来の免許制から許可制となった。自由競争のもとで活性化をめざす、いわゆる需給調整規制の撤廃である。ただし、この時点では貨物は除かれた。
(2)上限認可を必要とする料金は新幹線特急料金のみとし、その他の特急料金や座席指定料金は事前届出制とした。
(3)乗継ぎの円滑化について鉄道事業者に努力義務を課し、一方の事業者から協議の求めがあった場合は、技術的に困難であるときを除いて他方の事業者は協議に応じなければならないとした。
(4)事業退出について従来の許可制を原則1年前の事前届出制とした。
(5)運輸大臣は工事施工認可などのさい、すでに認可されたものがある場合など、図面等の省略ができることとした。

 認定事業者制度も、このさいに定められた。従来、新設・新造や改造される施設・車両は、すべて国(運輸省、現国土交通省)が設計確認や竣工検査を行なって許認可してきたが、この許認可業務について大幅に簡略化し、鉄道事業者の各事業所が自らの手で設計確認や竣工確認を行なえるようにするものである。認定にあたっては、国が事前に当該の鉄道事業者の体制、権限・責任の所在、設計・施工確認方法、内部監査体制などについて審査し、国が定めた基準を具備し、能力があると認められた事業所について認定する。これにより、通常は必要とされる図面などの添付書類が不要になるなど、手続きが簡略化される。

 対象となる業務は、鉄道土木・鉄道電気・車両の3種類がある。認定は事業所ごとに行なわれ、例えば、施設設計においてはJRのように支社ごとに部署がある場合など、認定も支社単位となる。また、認定された事業所が業務を行なえるのは、自らの事業所が担当する範囲に限られ、新幹線専門の部署が在来線についての業務を行なうことはできない。また、認定を受けた大手私鉄などが傍系の中小私鉄についての業務を行なうことも認められない。

 ちなみに、同制度の前身として設計管理者制度が存在していた。これは技術力を保有する特定の人物に設計確認の権限を与えていたものだが、竣工確認については国が行なっていた。今回の認定事業者制度では「組織」を認定の対象とし、竣工確認についても権限を与えた点が相違点である。

 また今回、設計確認と竣工確認の両方を実施できる事業所を一般認定としたが、従来の設計管理者制度を受け継ぎ、設計確認のみに限定した事業所を特定認定とした。

 なお、新制度の施行は2000年3月だったが、以後2年間は設計管理者制度が経過措置として残されていた。このため昨年後半から経過措置の期限となる本年2月までに新制度の認定を受ける事業者が相次いだ。

 認定鉄道事業者の第一号は昨2001年12月に認定されたJR東日本の16事業所で、本年4月1日現在、39事業者の78事業所が一般あるいは特定の認定を受けている。

(2002年9月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:07 JST