東海道新幹線品川新駅

 東海道新幹線17番目の駅となる品川駅が10月1日に開業し、同時に新幹線でダイヤ改正が実施された。1997年に着工、高架線を地平に下ろす工事をともなったため6年もの工期を要した。総工費は950億円。周辺は再開発によって高層ビルが建ち並び、東京全体の人の流れにも影響をあたえることになろう。

 新幹線品川駅は、次の3点の効果をねらって設置された。

(1) 首都圏における東海道新幹線へのアクセス向上をめざす。おもに山手線品川〜新宿間より南西側でトータル20〜30分の時間短縮効果を発揮するとみられる。また、臨海副都心や総武快速線方面、さらに羽田方面からのアクセスも短縮される。これにより熾烈な展開を見せる航空との競争においても効果が予想される。

(2) 輸送力増強に最も必要な基盤を整備する。つまり東海道新幹線の1時間あたり最大の容量は片道15本であるが、東京駅付近では毎時4本が東京駅〜大井車両基地間の回送にとられ、実質は11本が限界であった。このため回送列車に影響されない折返し駅を設け、能力をフル活用できるようにする。計画が必要となった1990年代初頭は需要が上昇を続け、早晩に輸送力が追いつかなくなると危惧されていた時代である。

(3) 輸送障害時の対策。災害等でダイヤが乱れたとき、東京駅が満線になって入駅待ちの列車が手前でダンゴ状態となり、混乱の収束に時間を要したが、新駅により折返し能力を高め事態の緩和や解消を図ることができる。

 東海道新幹線品川駅は、1998年に完成した在来線(JR東日本)部分の橋上駅舎コンコースと同一レベルでつながり、東西自由通路に面して南北両側に改札口がある。ホームはコンコース階の下で、地上にある。入口エリアの自由通路はガラス張りで、採光性に富んだ高さ30mの吹抜け空間を特徴とした。みどりの窓口は、オープンカウンター式窓口とエクスプレス予約に対応した券売機が並ぶ。改札内コンコースには冷暖房設備を設け、屋内空間としての充実を図っている。また、改札口から車内への動線に沿ってポイントごとに動画やテロップを用い、案内や運行状況の適切な提供が配慮された。案内の文字類は、従来よりも1.5倍の大きさとして見やすくしている。

 待合室は比較的ゆったりした椅子を設置しているほか、北コンコースの待合室は一画をモバイルコーナーとしている。コンコース全体が無線LANに対応している。トイレは、女性用の設備数を従来の駅よりも増やし、パウダールームやおむつ交換室、多機能トイレを備えている。また、バリアフリー設備として音声案内つき触知案内板を設置、コンコースには段差を設けず、エスカレータは水平部分を多くとっている。なお、エレベータは南側コンコース側にのみ、上下ホーム1基ずつ設置している。

 店舗はみどりの窓口の上層のカフェを含めて、すべてコンコース階に集約されている。このようにして、ホームには待合室や店舗をいっさい設置していないことも、他の駅とは異なる特徴として挙げられる。

 ホーム番線は上り本線側から21〜24番線となっており、通過列車がある上下本線側(21・24番線)には可動式柵を、すべての列車が停車する副本線側(22・23番線)には固定式柵を設置している。

 なお、駅の上部では2004年4月完成の予定でJR東海品川ビルを引き続き建設している。同ビルはJR東海の東京地区の本社機能、新幹線運行部門の現業機関、ならびに社宅や関連会社機能が集約される。

(2003年12月号)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:08 JST