宝くじ号 †今年(2001年)5月から走り始めた東京‐上野動物園の四代目モノレール、3月に導入された若桜鉄道の新型気動車。ともに、車体に「宝くじ号」の文字が書かれている。昨年以前に登場した三陸鉄道・秋田内陸縦貫鉄道・会津鉄道・智頭急行・井原鉄道・阿佐海岸鉄道・南阿蘇鉄道・松浦鉄道の新車にも同様の表記があり、2001年度は土佐くろしお鉄道・甘木鉄道にも入る予定。 この「宝くじ号」は、宝くじの売上金の一部を助成金として使う制度によって新造された車両に付けられるもので、その一方で宝くじの宣伝の役目を負っている。 今年の「サマージャンボ」― 「2等も1億円」で話題となった宝くじは、自治省の許可を得た都道府県および指定都市が発売元となり、発売を受託した銀行等が発売や当籤金の支払いなどを行なう仕組である。売上金の約46%が当籤金となり、残る約40%は収益金、約14%(いずれも1988年度)が経費・手数料・普及宣伝費となる。収益金は発売元の都道府県や指定都市に納められ、公園・学校・住宅など街づくりの財源となる。一方、経費・手数料は発売を受託した銀行等や売り捌き業者に支払われるもの、そして普及宣伝費はその目的で(財)日本宝くじ協会に預託される。最近の実績では、年額およそ180億円前後という。 宝くじ協会は、この受託金を使って、一方では新聞・雑誌・テレビなどを通じて広告宣伝を行ない、一方では地方公共団体・公益法人への助成を行なう。この助成金が車両購入などに使われたとき、「宝くじ号」の誕生となるのである。 この「宝くじ号」を導入しようとすると、まず、鉄道会社は都道府県等の宝くじを担当する部署(多くは財政課)に相談し、都道府県等が宝くじ協会に申請する。助成金希望が重複するさいは、各都道府県内で調整されたうえで申請される。そして、申請に対して協会は条件と照合して助成金の交付を決定する仕組である。 その条件の第一は、地方公共団体や公益法人の行なう公益事業である。このため、公営交通や第三セクター会社が対象になるわけで、民間会社は対象にならない。冒頭に列挙したものの多くが第三セクター鉄道で、いわゆる私鉄の名があがらないのは、そのためである。第三セクター鉄道自体が歴史の浅い存在なので、こと鉄道において「宝くじ号」を目にする機会が訪れたのは最近ということになる。 もう一つの条件は、宝くじを広く宣伝できることとされ、観光誘致や地域振興用に用いて広く目に触れるものであることがポイントとなる。このため、第三セクターに導入された車両は、すべて一般車両ではなく、座敷やテーブル、カラオケなどを備えたイベント車あるいはイベント対応車、トロッコ列車用車両となっている。 そして、車両費の一部を補助し残額を鉄道会社が支出する形ではなく、車両まるごとが寄贈される。この点も行政による近代化補助などとは意味が異なり、極端な話、第三セクター鉄道が営業を始めるときの最初の1両は、宝くじ号の対象にはなりえない。 なお、このほかの交通関係では、各地で活躍が目立つレトロバスも一部が「宝くじ号」である。また、都営地下鉄大江戸線で駅にうるおいをもたせるモニュメントや壁画の一部、名古屋市交通局のレトロ電車館も同様に宝くじの助成金で作られ、建築物にはその旨の銘板が取り付けられている。長浜に設置された日本ナショナルトラストのヘリテイジセンターも、申請や助成金の流れが少々異なるが、宝くじの売上金により建てられたものである。 (2001年8月号) |