東京臨海副都心

 東京臨海副都心は、東京都が都市機能の都心への過度の集中を防ぎ、多核型都市をめざすために計画した副都心計画の一つ。東京湾臨海部で13号埋立地やお台場を含む448haを開発し、就業人口7万人、居住人口4万人をめざす近未来的な都市計画が策定された。開発が始まってまだ経過の浅い1995年、未来都市のPRも目的の一つとして「世界都市博覧会(東京フロンティア)」の開催も計画されたが、これは中止され、その後も都市構造のあり方や開発計画そのものが問われるなど、計画は決して順調ではない。

 この臨海副都心へのアクセス鉄道となっているのが、新交通システムの「ゆりかもめ」と東京臨海高速鉄道「りんかい線」である。いずれも、都市博開幕に間にあわせるべく建設が急がれた。「ゆりかもめ」は新橋(港区)から芝浦を経て、東京湾に架かるレインボーブリッジを渡って臨海副都心エリアに入り、副都心内の各地区をぬう形で有明(江東区)に至る。一方、「りんかい線」はJR京葉線や営団地下鉄有楽町線と接する新木場(江東区)から有明地区を貫通して、お台場・青海地区側の東京テレポート(江東区)に至る。

 この2つの新線は、1995〜96年に開業はしたものの都市博中止で当初予定された観客輸送は白紙に戻され、利用の低迷が危惧されたが、すでに稼働し始めていた東京テレポートのテレコムセンターや国際展示場(東京ビッグサイト)に加え、民放テレビ局の都心からの移転、大規模ホテルの開業、高層住宅団地の誕生など急速な成長により、「ゆりかもめ」が好調な業績を見せるようになった。また、同線は全線高架で未来的な都市の眺望がよく、お台場海浜公園や有明テニスの森なども擁して、昼夜を問わず人気の観光・デートスポットとなったことも重要な点である。これらと並行して大規模商業施設の開業も相次ぎ、若年層を中心に話題を集める形になった。

 「ゆりかもめ」は当初、東京臨海新交通(株)臨海線の愛称であったが、柔らかなイメージで広く浸透したため、1998年4月には社名自体が「ゆりかもめ」に改称されている。

りんかい線

 一方、「りんかい線」は東京臨海高速鉄道臨海副都心線が正式名称である。これまでのところ、他線とつながる起点が都心を離れた新木場で、車窓も工業・物流地区や地下であるなど、「ゆりかもめ」のようにビジネス・レジャー両面から支持を得るという状況にはなっていない。利用が低迷し、延伸区間の工事費も膨張したことから厳しい状況に追い込まれており、東京都の第三セクターであることから本年度予算で都から追加の財政支援を受ける。

 この3月に延伸区間のうち天王洲アイルまでが部分開業して東京モノレールと接続したほか、2002年末には大崎まで全線開通してJR埼京線との直通運転により渋谷・新宿、さらに埼玉県方面と結ばれる。これにより集客範囲は格段に広がり、利用の大幅増に期待がかけられている。

 ただ、臨海副都心計画そのものでは、現在も広大な空白地帯があり学術・研究施設の建設などが予定されるが、事業費の膨張が問題視されており、さらに都心の旧国鉄用地の再開発等により大量のオフィス供給が見込まれ、一般企業の進出意欲も鈍い。これを受けて東京都は、今後おおむね20〜25年の長期的スパンに立つ臨海部の都市づくりの指針として「東京ベイエリア21」を本年2月に策定し、方向性を探っている。

(2001年6月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:57:10 JST