ACトレイン

 JR東日本が研究を進め、2001年度中に試験車両を完成させる予定の通勤電車が「ACトレイン」である。Advanced Commuter Trainを直訳すると、進歩的通勤列車になるとおり、ITの活用を中心とする情報サービスの提供、輸送の安定性向上、バリアフリーやエコロジーなど、21世紀に求められる多くのニーズに取り組むものとしている。

 試験車両は長さ16.5mの先頭車と13.4mの中間車から構成される5両編成で、中間部は連節台車を使用する。これにより必要台車数を削減し、編成質量や動力費の減少とコスト削減を図る。また、車体はダブルスキンパネル方式として部品点数を減らし、設計・製作工程数の削減も期待できる。配線類も高機能の汎用伝送技術を活用して削減する。ドアは外吊方式に改め戸袋部を解消することで側構体が片側3cm薄くなり、これにより客室の幅を6cm広げて281cmとする。209系広幅車体の通勤車やE231系の考えをさらに前進させるものである。駆動部分では歯車を介する方式を改め、直接、車輪を駆動する直接駆動主電動機(DDM)とすることで、伝達ロスを解消し、高効率化とともに騒音の低減を図る。

 車内における情報サービスとしては、列車内に送受信装置およびサーバーを設けたLANを整備して、映像装置を通じて運行状況などの案内、旅行情報、広告、ニュース番組などの提供を行なう。また、特急車両なども想定して、専用端末によるインターネットなどへの接続、個人端末による情報通信などに取り組んでゆく。インターネットとの接続により、車内で乗換え列車の検索や、その予約、観光情報や宿泊案内・予約などに活用することができる。

 バリアフリー化への取組みとしては、電車とホームの隙間を解消する車椅子用出入口ステップを一部ドアに設置、音声によるドア開閉案内も行なう。

 信頼性向上をめざしては機器相互間のバックアップ体制を整え、故障による輸送障害を減らす。例えば、進行方向のATS装置が故障した場合、従来方式では運転できなくなるが、後部のATSと情報伝送を行なうことにより運転が継続できるようになる。また、モニター装置は自己診断機能と応急処置システムを備えることにより、乗務員が簡単かつ迅速に対処でき、復旧時間の短縮を図ることができる。

 環境への配慮としては、軽量化とエネルギー効率の向上により現在よりも一層の省エネルギー化を図るとともに、部材をリサイクル可能な材料に変更する。この車両が廃車処分されるときに、すべての材料や発生物を廃棄物として外に出さず、次の用途として鉄道内部で使えるようにするゼロエミッションが目標である。

 これらの考えは、鉄道会社のなかでも、エネルギー問題やリサイクルなどエコロジーに最も先進的に取り組んでいるJR東日本ならではのものといえる。将来的にはこれから派生したさまざまな車両が、それぞれの会社の考えともミックスしながら、普及してゆくときがくるのかもしれない。

(2001年2月号)


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:29 JST