SuicaのあるTokyo

 Suicaは、JR東日本が展開する非接触式ICカードシステムの名称である。このSuicaが急成長を見せている。当初は2001年11月18日に首都圏(東京近郊区間)424駅の自動改札システムとして導入された。ICチップを内蔵するこのSuicaを自動改札機のリーダーライター部に接近させると、瞬時にデータが送受信され、乗車券としての有効性が判断される。リーダーライター部から10cm程度の範囲が通信範囲であり、磁気カードのようにパスケースなどから取り出す必要がなくなり、改札を通るさいの動作がスムーズになった。

 さらに本質的なこととして、ICカードには磁気カードより大量のデータを盛り込めるため、機能が大きく広がった。Suicaは大別して「Suica定期券」と「Suicaイオカード」がある。Suicaイオカードは、従来の磁気式SFカードの機能を移行したものだが、チャージ(金額の積み増し)すれば、再び利用できる点が異なる。Suica定期券は定期券機能を合体させたもので、券面区間外にまたがって利用した場合も自動的にチャージ金額から運賃が引き落とされ、精算の手間などが激減した。また、Suica定期券には生年月日や氏名などの個人データも入っているため、紛失時には直ちに該当カードの使用停止措置がとられ、この機能をもって再発行も可能になったことが画期的な変化である。

 2002年4月21日には東京モノレール、同年12月1日には東京臨海高速鉄道が導入し、JR東日本以外の会社に拡大した。2003年10月12日には東北・上越新幹線東京〜宇都宮・高崎間各駅がSuica対応となり、「Suica FREX定期券」などが導入された。在来線用のSuica定期券でも利用でき、その場合は特急料金が引き落とされる。また、同月26日には首都圏を離れ、仙台地区65駅に導入された。

 一方、2003年6月にはJR東日本のクレジットカード=ビューカードにSuica機能を併せ持たせた「ビュー・スイカ」が誕生し、クレジットカードのポイントが、Suicaのチャージ金額に加算されることとなった。チャージをクレジット決済で行なうこともできる。

 そして2004年3月22日、Suicaによる店舗でのショッピングサービスがスタートした。駅構内の店で商品購入ができる「電子マネー」としての展開で、店舗のレジのリーダーライターにかざすだけで決済される。首都圏・仙台地区あわせて64駅196店でのサービス開始であったが徐々に拡大し、6月14日には店舗での利用件数が累計100万件を突破した。最新のデータでは1日5万件を数える。7月以降は駅のファーストフードBecker'sなどにも拡大、8月中には500店舗を超える見込み。そのほか、JR東日本本社やJR品川イーストビル(賃貸オフィス)の入退館システムにも導入されている。JR東日本では、「SuicaのあるTokyo」キャンペーンを展開し、利用促進に向けた取組みを続けている。

 このように交通機関あるいは物品購入など一つのカテゴリーに留まらないICカードの利用法は前例が少なく、世界的にも注目され、高く評価されている。香港の「八達通」は最先端として知られるものの、他に海外の電子マネー実験では成功例が少ない。鍵はいかにシステムへの参加者を増やすかにあり、日本の都市生活者に不可欠な、定期券を中心に鉄道の乗車券をベースにしたことが成功の要素とされる。

 現在、Suicaホルダー数は約890万人だが本年秋から湘南新宿ラインなどに連結されるグリーン車の新改札システムへの導入、8月1日からのJR西日本「ICOCA」との相互利用などで、ホルダー数は増加が見込まれる。

 さらに今後、関西民鉄系のスルッとKANSAIがポストペイ(後払い)などの新サービスを含めて展開を開始する「PiTaPa」や、首都圏民鉄やバスが導入を計画するカードとも相互利用を図ることが合意されている。2005年度には携帯電話機を使った「モバイルSuica」がスタートするほか、大手コンビニ店と提携した市中店舗も誕生する。

(2004年9月号)

 


Last-modified: Sat, 24 Oct 2009 20:56:34 JST